(一)

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「起きて下さい。朝倉三佐!」  そう言って俺の体を揺さぶる副長の声で目が覚めた。殴られた左頬が急に痛む。 「三佐、緊急事態です。脱走兵が出ました」 「誰だ」  左頬を押さえながら尋ねた。まさか俺の部隊から脱走者が?  俺が指揮しているのは陸上自衛隊の一個小隊だ。それも普通の歩兵連隊ではない。特殊作戦群、通称「特戦群」や「S」と呼ばれる特殊部隊だ。その第四中隊の中隊長として四個小隊を率いている。今日ここに来ているのは、第一小隊の俺を含めた計八名だ。 (続く)
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