カフェタイム

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「だけど、謁見をしたおかげで得たものも多かった」  勇者は、謁見前に王城で働く人々から話を聞いていた。王都の周辺で何か変わった事はないか? この国の何処かで、変わった事はないか? 魔物の数が増えたと報告は有ったか? そう言ったことを、世間話を交えながら勇者は聞いていた。 「流石は王都。様々な地域から情報は入ってくる。それでいて、王都の周囲は守られているから、王都で暮らす人々の生活には変化がない」  ここで、勇者は頼んでおいた飲み物で口を潤す。勇者が頼んだのは、メニュー表に「心をリラックスさせる効果のある茶葉を使用」と書かれたハーブティー。ポットとカップのセットで提供され、透明なポットの中では、黄緑色の茶葉がゆらゆらと揺蕩っている。一方で、茶葉から成分を抽出して出来た茶の色は、茶葉とは違っていた。それは何故か赤み掛かった色をしており、湯気は仄かに甘い芳香を発している。  ハーブティーを注いだカップは陶器製と思われ、細めの取っ手に金色の装飾がなされていた。また、カップの縁には銀色の装飾がなされ、それらは太陽光を微かに反射している。 「王都に一切の情報が入らない地域がある。それが、ただ王都へ報告する必要がないから、その地域からの情報がないのか、その地域で何かが起きて情報が途絶えたのか……分からないからこそ、調べる理由になる」  目標が出来た時の勇者は、輝いて見えた。適正ジョブに勇者と出た存在。勇者と言うジョブは責任感が有りながら、そのスキルが発動する出来事が起こるまではただの冒険者と変わらない。だからこそ、勇者として人を助けられるような事象が有る時、勇者のやる気は一気に上がるのだ。 「暫くは、王都でその地域と近い街から来た商人から話を聞いてみよう。それで、何も問題が無さそうならその地域には向かわない。もし、何か危険性があると分かったら、その地域へ調べに行く。次の目標はこれで良いかな?」  勇者はこちらを見て首を傾げた。勇者の意見に反対する理由は無いが、直ぐに意見を受け入れるのも、無責任なやり方だろう。なので、カフェで過ごす少しの間だけ、回答するまでの猶予を貰っておくことにした。
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