カフェタイム

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「分かった。旅に出るとなると準備も必要だし、簡単には決められないよね」  勇者は、大抵のことに寛容だ。こちらが勇者の意見に賛成しようがしまいが、直ぐに返答出来なかろうが、怒るどころか不機嫌にすらならない。むしろ、その性格だからこそ、勇者が適正ジョブなのかも知れないが。 「どの道、暫くは王都に居なきゃならないからね。謁見前に預けた装備が、手入れが済んでから返却されるから、それまでは」 「待て、それを始めに言え」  勇者は、何処か抜けたところがある。旅に出るなら必要となる装備が手元に無い。それでは、戦闘になった時に負ける確率が高くなる。これからの予定を決めるよりも前に、それを話すべきではなかっただろうか。 「あ、ごめん。てっきり同じ様に装備を預けたままなのかと……そっか、僕の装備は元々は支給されたものだけど、君の装備は違うもんね」  どうやら、勇者の装備は支給されたものであったらしい。確かに世界を救うと言われる勇者相手になら、国から支給品が有っても不思議ではない。ゲーム世界なら、訪れた店の順により、良い装備が都合良く並んでいたものだが。 「剣も防具も、支給されたものは旅をする中で劣化していて……防具は、新しいものを買ったから良いけど、剣はちゃんと職人に手入れをして貰わないと駄目なんだって」  それは確かにそうだろう。ゲーム世界の武器なら、どれだけ敵を倒しても切れ味は変わらなかった。だが、リアルの世界であれば、どんなに丁寧に扱っていても、刃物は刃こぼれしてしまうものだ。だからこそ、料理人の包丁は年を重ねる毎に小さくなるのだし。 「謝る程のことじゃない。だが、戦闘に……いや、命に関わるようなことは、なるべく早めに報告をして欲しい。一人で戦うのと、二人で戦うのでは戦略が変わってくる」  勇者は呆けた表情を浮かべた。それだけ、意外な返答だったのだろう。
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