聞き込みは行き先を決める為に必要です

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「だからって……ううん、僕も油断していたから、だから」  勇者が言葉を紡ぎだしてから少しして、体内に入った毒が本領を発揮した。防御魔法を発動しているから、追加攻撃が来てもそれは無効だ。だが、防御魔法を発動しながら、解毒魔法まで使うとなると……現状では、無理だ。レベル的なものもあるのだが、集中力が毒によって削がれている。騒ぎに気付いて兵士が来るのが先か、防御魔法を維持する集中力が途切れて防御魔法が解けるのが先か……いや、それ以前に意識を何時まで保てるか分からない。 「短剣を借りるね」  勇者は、遠隔攻撃をしてきた相手に短剣で何をするつもりなのだろうか? それを聞く余裕が今やない。上手く声が出ない。そして、勇者に短剣を手渡す力さえも。  勇者は、私が装備していた短剣を抜き、その刃を見つめた。短剣の刃は月光を反射し、夜の冷ややかな空気の中で光った。いや、月光を反射しただけではない様子で光った。それから、急激に魔力が減る感覚を味わった。 「これが、僕達の絆の力だ!」  あ、これはマズい。本来なら、ヒロイン相手にチュートリアル的な流れで発動させる術の前口上だ。その術は、こちらの体力が一割に満たず、かつ魔力は八割以上残っている状態で発動可能な術。この術が発動すれば、全ての敵は戦闘不能に陥る上に、状態異常の解除と体力の全回復が出来る。但し、魔力はほぼ枯渇する。 「僕らの敵に清らかな裁きを! クロッシングアタック!」  止める間もなく術が発動。周囲は純白の光に包まれた。元々、殆どの敵は昏倒していたので、この大技を使う理由も無かった。しかし、これ以外のやり方で、遠隔攻撃をしてきた相手に丸腰の勇者が対応出来る方法も分からない。ともあれ、魔力を代償に解毒は出来て体力は回復した。これ以上の戦闘が無ければ、何も問題はない。
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