AIプロデュース

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 1 「わが社も人手不足のため、一部の業務内容をAIにまかせたい」  俳優の柳原茜(やなぎはら)は、社長の発表に息をのんだ。この日は偶然所属事務所に立ち寄って社長のAI導入宣言に遭遇した。  ついにきたか――というのが茜の率直な感想だった。 報道番組ではAIが作り出した人工音声でニュース原稿が読み上げられる時代だ。取って代わられるとまではいかないまでにも、自分たちの仕事にも何かしらAIがかかわってくると覚悟していた。  たしかに茜の所属事務所――P.Sエージェンシーは大手芸能事務所にしては社員が著しく不足していた。時間は不規則だし、クライアントやタレントのわがままにも対応しなければならないし、マネージャーの仕事に至っては無意味な使い走りまでやらされる。  時代は令和だ。たとえ新入社員でも、理不尽な要求に応じるほど会社に対する従順さは期待できない。だから新しい社員を採用しても長く居つかない。茜がP.Sエージェンシーと契約を交わしたのは十六歳。以来七年間どれだけの社員が事務所を去っていったかわからない。
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