0人が本棚に入れています
本棚に追加
2
AIの導入後、十日ほどで社員たちはその管理力をあてにするようになった。一カ月後には所属タレントの残り三分の二のスケジュールも担当することになる。
翌月には給与計算もAIにまかされるようになり、さらに所属タレントのカウンセリングをマネージャーと共有するまでになった。茜がAIと接触したのもこのときである。
カウンセリングに宛がわれたのは社内の小会議室だった。同席したのは茜を担当してくれている村越マネージャー。見た目は髪の薄くなりはじめたオジサンだが、この道三十年のベテランだ。
『柳原茜さんですね、よろしくお願いします』
茜が目の当たりにしたのは、ノートパソコンの画面に映し出された女性の顔だった。ウェーブのかかった栗色の髪、透きとおるような白い肌。日本人離れした容姿なのになぜか既視感を覚えた。
「えっ……と、あなたは?」
緊張で茜の声が上ずった。
最初のコメントを投稿しよう!