AIプロデュース

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「……私は、周囲から評価されるお芝居をしたいです。世界で通用する俳優になりたいんです。体型だって理想に近づくよう体重を絞りたいし」  茜の答えにエイミーは数秒沈黙した。 『つまり、理想のプロポーションを手に入れ、高く評価されるべき作品に出演したいというのが茜さんの望みでしょうか?』  エイミーの問いに茜は首をひねった。 「間違ってはいないけど……」  簡潔な言葉を選べばエイミーの言うとおりなのかもしれない。しかし、たかが3kgのダイエットすら難しく、ほとんど願望に近かった。 『茜さんの当面の目標は、仕事と並行して肉体改造を行うことです』  沈黙を同意と受け取ったらしく、エイミーは茜のスマホに計画表を送信してきた。計画表の第一日目は今日の日付で設定されている。 『体型作りに必要な運動や食事を設定させていただきました。空いている時間お芝居のレッスン、舞台鑑賞を予定してあります」 「うわっ、何これ」  茜をつい声を上げてしまった。朝起きてから、夜寝るまでの日程が綿密に組まれている。過去に仕事が集中した時期よりもみっちり予定が詰め込んであった。食事も自炊ばかりではなく、どういった店でどのような料理を食べればいいか指定してある。 『所属タレント一人一人に合った計画表を提示させていただいております。急な仕事が入っても、それに対応して変更点をお知らせいたします』  これぞAIの能力だ。茜はその完璧さに言葉を失う。 『茜さんはこの計画表を実行するだけでいいのです。』  これなら面倒なカロリー計算は不要だ。茜自身もこのようなプランは立てられない。だが、このとおり動いて本当に自分が夢見る体型になるのだろうか。 「とりあえず挑戦してみればいいじゃないか。俺にはこんな計画表作れないよ」  茜の躊躇(ちゅうちょ)を察した生身の村越マネージャーが背中を押す。「ダメで元々じゃないか」と耳打ちされると少しばかり肩から力が抜けた。 「わかりました。計画表に沿って頑張ってみます」  一回目のカウンセリングは三十分で終了した。
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