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 3  茜の狙いは見事に外れた。  三回目のカウンセリングをまえに舞台の仕事が入った。ワークショップ主催側の演出家に顔を覚えてもらったらしく、自分が演出と兼業した脚本作品に出演しないかと声をかけられたのだ。端役(はやく)だったが主演を務めるのが女性に人気の高い俳優だったため注目度は高い。事務所断りを入れてから茜はオファーを受けた。  エイミーが、茜を外部のワークショップやレッスンへ参加させた理由がわかった。演技力の向上よりもコネクションの開拓を優先していたのだ。 「大手と言ってもウチは舞台関係のコネが少ないからね。ドラマのバーターでねじ込むくらいならできるけど、新規開拓する根性がある社員もいないしなぁ」  村越マネージャーはため息交じりに漏らした。 「もう、俺たちのやり方じゃ時代に太刀打ちできないんだな」  茜は「俺たち」の複数形がどこまでを指しているのか問い質せなかった。 芝居の稽古(けいこ)期間に入ると茜は他の俳優たちから多くを吸収した。演出家のコネで集められた中堅の役者たちはクオリティーの高い演技を見せてくれる。事務所内で行われる内輪だけのレッスンではお目にかかれない一流の演技に刺激を受けた。 『さすが茜さんです。オファーが増えてきましたね』  三度目のカウンセリングでエイミーは満面の笑みを浮かべていた。芝居に対して貪欲(どんよく)になった茜に依頼が増え始めたのだ。同じころからオーディションに合格する機会が増えた。映像――映画やTVドラマだ。
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