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「別れてほしい」
蓮子の心が激しく揺れた。
「どうして! 私、殺してなんかいないわ!」
周囲の人々が、ギョッとこちらを見る。
「それじゃあ、警察に行ってくれ。目撃情報とも一致しているし、状況証拠もある」
「そんな……」
真っ白になった蓮子の頭は、次第に赤黒く染まっていく。
「……私を捨てるつもりなのね」
鞄の中に手を入れる。
「浮気相手のところに行きたいから、私の存在が邪魔になったのね。だから、犯罪者の罪を被せて、縁を切ろうとしているのね!」
どうして入っているのかは分からない。
「あなただけは信じていたのに!」
蓮子は包丁を取り出した。
「あなたのために綺麗になったのに!」
最愛の人が、鮮血をぶちまけて倒れた。
*
赤絨毯とシャンデリアが特徴的な、絢爛な一室である。
「……細かい文字をびっしり敷き詰めれば、読み飛ばす人間というのは、一定数いるんですよね」
「愚かだ。薬の効果と、一日何回飲むかくらいしか、読まなかったんだろう」
「ちゃーんと説明書に書いてあるのですがね。意識を乗っ取られる可能性があるって」
「国の足を引っ張る下層国民同士で、自滅させることができそうだな」
「彼らは、人のせいにするのが得意技ですからね。薬漬けにして支配するなり、処分するなりが妥当かと」
スーツを着た男性と、白衣をまとう男性が笑っていた。
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