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二〇二三年、後にAI黎明期と呼ばれるその年、AIに革命が起こった。それまで無機質な演算のみを領分としていたAIは絵画や小説といった芸術分野に進出し、人々はコマンドを打ち込んでは出力される奇怪な作品を「AIの考える〇〇」と大いに笑った。しかし、インターネット上のデータの無断使用など、倫理的な問題が相次ぐことになる。急遽有識者が集められて議論が重ねられた後、世界は三年という異例の速さでAI法を樹立する。
一、AIを使用して制作した作品には認可されたデジタルスタンプを押すこと
二、学習には提供者より承諾のあったデータ群のみを使用し、開示請求があれば応じること
三、学習のアルゴリズム及び出力のコマンドは制作者の創造性に帰属し、AI特別著作権として保護され、何人も侵してはならないこと
法整備が進んだことで世界中でAI技術が急速に広まり、芸術分野に多彩なAI作品が台頭する。特に声も性格も動作パターンも、百パーセントAIによって構築されたアンドロイドアイドル・AIna-アイナ-の衝撃は凄まじく、彼女の出現により平成初期のSF映画のような「AIに心があるのか」論争が激化する。半年後には「AIに人権を認めろ」と声高に訴える活動家まで現れ、AI法が樹立された二年後、遂に四つ目の条文が追加される。
四、AIによって構築された人格に、人権を主張してはならない
その頃にはAI対する認識は更に変化する。それまで一様とみなされていたAIは設計者のアルゴリズムや学習に使用するデータ群により得手不得手が認められるようになった。それらは個性として楽しまれ、推しAIという新たな概念を生み出す。二〇四〇年、AI黎明期と呼ばれた年から七年後の出来事である。
そんな日本で今日び、急速に支持を集めるAIがあった。Amato、恋人や最愛の人を意味するイタリア語amatoの意味を与えられたそのAIは恋愛シミュレーションゲーム制作に特化したAIだった。AIの作るシナリオ自体は珍しくなかったが、Amatoの生み出すシナリオは瑞々しく情感にあふれ、ファンの心を掴んでやまなかった。一体どのようなデータ群とアルゴリズムを使えば魅力的な作品が生み出せるのか、調べるため一人のWebライターが開発現場の門戸を叩いた。
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