モラハライケメン執事は社長令嬢のお気に入り

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安住電機のオフィスでは、社長を含め重役たちがモニターに釘付けになっている。日々繰り広げられるふたりの口論(?)に皆、顔のほころびを禁じえなかった。 「いやはや、それにしても社長の娘に対し、大胆不敵な口をきくものですな」 「しかし社長、それでもあの言動を受容するお嬢様の寛大さ、素晴らしいことこのうえありません!」 「そうか? まぁ、これも娘の成長の試練と考えるべきかのう、はっはっは」 一方で、ミグミグカンパニーの社長と、矢野のモデルとなった技術者の男はダラダラと冷や汗を流していた。技術者の男は自分自身が行った研究とはいえ、まさかそこまで高い精度で自身の妄想癖が人工知能を介して再現されるとは思っていなかった。 令嬢に対してここまでの失礼千万な言動を放ってしまった以上、たとえ人工知能と気づかれずとも契約が成立する見込みはなくなった。社長は絶望に瀕し、技術者の男は顔から火が出るほど赤面していた。 「ところで社長、この不毛なモニター実験はまだ続けられるおつもりなのですか」 「もちろんだとも。愛里がこの執事がアンドロイドであると指摘しない限り、実験は期限まで続ける方針だ。採用するか否かは別にしてな」 重役たちは小声でクックと笑いをもらす。恥を晒させるために続けているとしか思えなかった。 だからミグミグカンパニーのふたりは実験が終わるまで、ただ屈辱に耐え忍ぶしかなかった。
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