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7.
今はまだ曇りだけど、今日はこれから雨足が強まる予報だ。
でも、彼は登山を決行するだろう。むしろ今日のような日を好んで。
彼が現れる山について、見当は付いている。
予想は的中した。
風は無い。他の登山客もほぼいない。絶好の日だ。
今日のような日を、心待ちにしていた。
邪魔が入らないことを願う。
一足早く山頂につき、彼を待つ。
雨が強くなってきたけれど、気にならない。
彼が現れた。
けれど、言葉を交わすべき場所はここじゃない。
一度、去る。きっと追いかけてくる。
事前に調べておいた 東屋。雨をしのげる唯一の休憩所。
登山用ザックを置き、レインジャケットのフードを脱ぐ。
はやる気持ちを抑えて、平静を装いながら、登山用ザックの中身を取り出すふりをする。
視界の端に、彼の姿が入る。
やっぱり追いかけてきた。
クリアはもう目前だ。
一言目、なんと言うのだろう?
早く来い。
早く来い。
早く来いーー。
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