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「もう未来は寝た?」
「ぐっすりだよ。君が帰ってきてからあの子も元気になった」
桃華は雄二と一緒のベッドに入っていた。
訣別以来初めての同衾だ。
2人は柔らかいベッドに仰向けに寝て、肩を寄せている。
「おかえり桃華」
「ただいま、今までごめんね」
「気にしなくていいよ。また帰ってきてくれて嬉しい」
雄二は怒りや文句を一切口にすることなく、歓迎の言葉だけを言った。
桃華は人間として異質な夫を、もう拒まなかった。
「あなたは私を愛しているの?私はあなたを愛しているの?」
「どうしたんだい?」
「いつも考えてたの。あなたと眠るたびに」
「答えは出た?」
雄二は他人事のような口調で言った。
思わず桃華は彼の腕を抱きしめてしまう。
「聞かないんだ……賢人くんのこと」
「聞かれたいのかい?」
「別に。ちょっと引っかかっただけ」
「うーん。話を聞く限り賢人くんはいい子そうだし、なにより桃華は魅力的だ。独り占めするのは申し訳ないよ」
「清廉潔白って感じだね。気持ち悪いよ」
「酷いなぁ。まぁ何度か言われたことあるけど」
「やっぱり」
桃華はクスクスと笑った。
それは未来にも負けぬほどの子供っぽい仕草だった。
「あなたも浮気しなよ」
「浮気したいと思える人がいない」
「ほら、ずっと私が悪役だ」
「浮気をしたのは桃華だろう」
雄二は吹き出して目元を緩ませる。
桃華は彼の手を強く握った。
「未来には幸せになってほしい。あの子にはなんの罪もない……でしょ?」
「その通りだよ」
「私あの子のためならなんでもするよ。だからあなたも……私のことは許さなくていい、どれだけ恨んだっていい。償いもするよ……でも未来のいい両親でいようね」
「恨む?僕が桃華を恨むとすれば君が未来を殺したときだけだ」
「もしそんなことがあれば私を殺してくれる?」
「うん、必ず」
「嬉しいね」
雄二は本気だった。
その本気が桃華に伝わったからこそ、彼女は少しだけ嬉しくなる。
彼の異常性を笑うことができて、桃華は自分の成長を実感できたのかもしれない。
「ヤる?」
「ああ、いいね」
桃華は服を脱ぎ、雄二と唇を重ねた。
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