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「人間を殺すことができるウイルスではなくて、結果的にそうし向けるウイルスを作成して感染させているとしか思えない。それは、人間とは何か、の定義に関するウイルスだと思われる」
「人間とは何か?」
怪訝な顔になるサヤカ。
「人間と他の生き物、あるいは植物や機械なども含めてもいいかもしれない。その違いは何だい? それを元にAIも対象が人間かそうでないかを判別しているんだけど」
「生物学上の違い、じゃないの?」
「基本はそうかも知れない。しかし、それだけじゃあ範囲が大きすぎるし、判断材料としては不十分だ。それに、人間は千差万別だ。知能のレベルを基準にしたら、十分に発達していない乳幼児は人ではないとされてしまう。知的な障害を持つ人もそうだ。二足歩行を基準にするわけにいかないのも同様だ。言葉によるコミュニケーションを図るというのも同じだ。無口で人と接するのが苦手な人だって人間だ。みな、人間を定義するには未熟すぎる。なので、それら様々な要素を全て掛け合わせながら、目の前にいるのが人間と言えるかどうかを判断することになる。AIはそれを瞬時にやっているんだ。だから、つけ込む隙が生じる」
「え? 隙?」
「そう、掛け合わせる要素をちょっと加えて、生物学的には人なのに人間ではない、だから殺しても良いと判断させるウイルスさ」
「どんな要素?」
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