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 「じゃあ、これは……」  彼は今、複数の男達を殺害した。サヤカを守るために……。  「はい。たぶん僕もウイルスに感染しているようです。この男達を殺すのに、全くためらいがなかった。だから、すぐに機能停止します。その姿をあなたに見られたくないので、もう行きますね。では……」  サッと身を翻して歩いて行くコータロー。  「ま、待って。助けてくれてありがとう。何か、救う手立ては? 機能停止しなくていいようには……」  「ウイルスに関しては全く未知のままなんです。防ぐのはムリです。さようなら」  そう言った後、微かにためらいを見せたコータローがいったん立ち止まり、サヤカをまっすぐに見る。  「僕は、あなたのことを知っていました。大学の頃同級生でしたから。ただ、憧れて見つめることしかできない情けない男だった……」  「え?」と息を呑むサヤカ。そして、記憶の蓋が開いたように、過去がよみがえった。  そう、大学時代、サヤカを何度か見つめるような視線を感じた。一度だけ、その男性と目が合った。  彼は戸惑いながらも、微かに笑った。その時の瞳に暖かみと優しさを感じたのだ。  いい人っぽいな……。  そう思ったが、その後話をすることもなく、時は流れていた。  あの時の……。  「思い出してくれたようですね。それだけで嬉しいです。では……」  コータローは今度は走り出す。  「あっ! 待って!」  呼びかけるが、あっという間にその姿は消えた。  あるのは夜の闇……。  しかし、そこには彼の笑顔がいつまでも映っていた。                  Fin
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