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誰かに見られているような気がして、サヤカ・フリーセンは足を止めた。そして辺りを見まわす。
高層ビルが建ち並び、その合間を縫うように飛行型タクシーが行き交っている。
煌びやかなネオンに彩られた街中を歩く人々も、どこか忙しなさを感じさせていた。
ヨコハマシティの中心部は、22世紀まであと僅かとなった今でも賑わいを保っている。
気のせいかな?
首を傾げ、もう一度視線を巡らせてから歩き出した。
神経質になっているのかも知れないが、用心に越したことはない。彼女はヨコハマシティポリスの刑事として、これまで多くの犯罪者を検挙してきた。特に現在所属する部署は、管轄内での凶悪犯罪の発生率も高い。悪事を行うグループや組織をいくつも壊滅させてきた。なので恨みも買っているだろう。
ウエスト分署に着くと、ケンゴ・キムラが手を上げて奥の取り調べ室へと誘う。彼はすでに50代のベテランだ。
「先ほど逮捕されたチャンの取り調べですね?」
「ああ。妙なことを言い出したらしい」
顎で部屋を示しながら、そのドアを開けるケンゴ。サヤカも続いて中に入った。
すでにテーブルの向こうにはチャンがいる。中肉中背の男性で、感情が乏しいのか表情があまり変わらない。
彼は先ほど、ファミレス内で別の男性とトラブルになり、最終的に殺害した。
店員の証言によると、相手の方がガラが悪かったという。同席していた客に対して暴力をふるっていた、という目撃者もいた。マフィアの構成員らしく、何か弱みにつけ込み恐喝していたのではないかと思われる。
チャンはその男に暴力をやめるよう注意したが、怒って殴りかかってきたため応戦し、逆に殴り倒した。打ち所が悪く男はその場で死亡――正当防衛か、悪くて過剰防衛となる案件だろう。
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