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うたかた氏より寄贈執筆 【思い出のハンバーグ定食】
はじめまして、うたかたと申します。
いつも裏路地のねこさんに作品表紙を作っていただいており、何か恩返しをと思い、1ページ寄稿しました。
裏路地のねこさんファンの方。
まわれ右を何回かして、一周回って、結局読んでください。お願いします!🙇
さもないと、ねこさんに体育館裏へ呼びだされるんです。肩パンされちゃう。
さて、僕の『美味しいハナシ』ですが、職場の昼休みに食べていた【ハンバーグ定食】。
残念ながらコロナショック後に店が無くなったから、今は食べる事が叶いません。跡地は今、ナンのおいしいカレー屋さんになっております。周囲はカレー屋、ラーメン屋だらけとなりました。不況に強いのか、この二料理は。
ランチタイムに、いそいそと外へでて徒歩五分。洋食屋の緑色扉を開くと、響くカウベル。コック帽子をかぶった店長が愛想よく「いらっしゃいませ」と声をかけ、奥さんが会釈でお出迎えしてくれる。
僕が席に着くと、奥さんがオーダーを取りに来てくれます。
(ちなみに、作家さんのサインが大事そうにカバーをされて飾ってありました。輝かしい歌手とか芸能人じゃなくて、作家さんのサインを置くというのも趣があったな)
もちろん【ハンバーグ定食】を頼む。他に『温かいコーンスープ』と『丸パン』。食後の『珈琲』を選びます。
同僚と無駄話をしていると、コーンスープが運ばれて来ます。半分以上飲んだ後に少し残す。
コーンスープで体が温まった頃合いに、丸パンとメインデッシュが運ばれてきます。
丸パンは中央に切り込みがはいっており、挟まれた四角いバターが溶けてる。
パンを先ほど残したスープにひたして食べる。
しみ込んだバターと相まって、口のなかに味わいが広がります。
そして、子供のようにメインの【ハンバーグ】にがっつく。ナイフで切ると肉汁と湯気が溢れてくる。濃厚なソースと絡まって、オイヒイ。
箸休めならぬフォーク休め? に付け合わせのマッシュポテトも食べる。
あっという間に【ハンバーグ】の乗った皿はからとなるのですが、少したって胃の腑が落ち着いたころに、珈琲が卓にやってきます。
焙煎が深く苦みのある珈琲をのんで、食事終了。ミルクと砂糖をいれた珈琲には、最後の一飲みで爽やかな甘みが。
この【ハンバーグ定食】から、午後の仕事も頑張れる活力をもらっていました。
スープや珈琲を運ぶタイミングが絶妙だった。さりげなく見ていてくれたんでしょうね。
お客への気配りが行き届いた素敵なお店でした。まさか潰れてしまうとは。ほかにも事情はあったようですが、うらむぜコロナの野郎。
最後に自分の失敗談を一つ。店の入り口脇にある小部屋でたまに、ベビーベッドに寝た赤ん坊がいました。
何かあった時に奥さんが駆け寄れるように扉は空きっぱなし。
この頃、僕の家にも小さい子供がいたので、
「大変ですね。六ヶ月くらいですか。でも一歳を過ぎたら寝る時間も増えるし、楽になりますよ。頑張ってください」
と目に隈のある奥様を応援したのです。
ある日、僕がランチを終えて店を出ようとしたら、制服姿の男の子が一人来店。
珍しいお客さんだなと思っていると、奥さんから「うたかたさん。うちの長男です。高校二年生になります」と紹介をされました。
よくよく話を聞くと、四人の子供がいて赤ん坊は末っ子だということ。
おわかりいただけたでしょうか?
奥さんは四人も育て上げた歴戦の戦士だった。そんな人にワイは育児のアドバイスを偉そうに言うてもうたのだ。
小学校のサッカー少年が、日本代表の選手に「大変だろうけどお前も頑張れよ」と言うようなもの。僕は長男さんに挨拶をして、顔を赤らめながら足早に去った。
口は災いのもと。もちろん美味しい食事も食べるから、幸せのもとでもあるのだけど。善意の一言で、恥をかくとは(笑)。
以上が僕の【ハンバーグ定食】の思い出だ。食べたいなあ。職場周りにまた素敵な洋食屋ができないものだろうか。
(執筆者 うたかた氏)
◇ ◇ ◇
作品を色々考えていたら、「美味しいハナシ」を書く間がなくなった。
……という話をうたかた氏と話していたところ、嬉しいお申し出があった。
「僕、書きましょうか?」
冗談だったかも知れない。
でも、私は乗っかった。
だって、うたかた氏のエッセイ、面白いんですもの。
童話、児童文学、エッセイが上手になりたい私としては、うたかた氏のお友だちにお手紙を書くように丁寧な「日々のあぶく」が面白くて、その才能が羨ましいから。
今回うたかた氏に書いて頂いた「美味しいハナシ」は、普段裏路地が書いたハナシと違うテイストをお届けできたのではないかと思う。
うたかた氏の人柄の良さと、そこはかとなく漂う品性、そして溢れ出るおとぼけ具合を、ご堪能頂けたら幸甚です。
【うたかたさんの(お友だちに手紙を書くように丁寧に書いているエッセイ)『日々のあぶく』はこちらから↓】
https://estar.jp/novels/26135007
最後にうたかた様
心のこもった作品、ありがとうございました。
切磋琢磨できるよう、精進します。
(後書 裏路地のねこ)
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