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高嶺裕太
次の日、親切にしてくれている隣の席の女子、BL大好き遥ちゃんに聞いてみた。
「みんな、平日どれくらい勉強してるのかな?」
「うーん、私は時間でいうと2〜3時間かな? だいたいみんなそれくらいなんじゃない? 多い人だと8時間ととかしてるねっ」
――マジか…… 2時間すら一度も到達したことないな……
「ちなみに記憶を失う前の俺って……どれくらい勉強してたか知ってる?」
「それがまさに、8時間だよっ」
両親や友人に話を聞くと、今の俺とは大分違う人だったらしい。そもそも、環境からして違った。
今の俺は月5万円のお小遣いに、登下校は車での送迎、家庭教師もついているが、本来の高嶺裕太にそんなものはなかった。
お小遣いは1万、登下校は徒歩と電車、家庭教師なし、自分で大学の学費をバイトして貯金しながら、毎日6〜8時間勉強していたそうだ。そしてバイトからの帰り道、交通事故に遭ってしまった。
今、両親が俺にやたら愛情と金を注ぎ込んでいるのは、厳しくし過ぎたせいで息子は事故に遭ってしまったと、自分たちを責めた結果だった。
俺は絶望感に打ちひしがれた。こんな進学校のスペックチートみたいな奴らでも、めちゃくちゃ努力してるのか……。
そして、本来の高嶺裕太より優遇された条件で、俺は高嶺裕太を落ちこぼれさせた。彼が積み上げて来た努力も、夢も、全てぶち壊した。
俺は最低だ……
全て"遺伝"や"環境"のせいにして来た。でも、そうじゃなかった。それを嘆く前に、やるべきことをやっていなかった。ただ、それだけだったんだ……
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