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悲劇の少年
「終わらない……終わってたまるかっ!」
そう言い放つと、少年は空へと思いっきり羽ばたいた。実際に飛んでいるわけではなく、ただ下へと落ち続けている。
彼は、三十階建てのマンションの屋上から身を投げ出したのだった。
自殺するためではなく、助けるために。
一人の少女を――。
***
木村善継、十五歳。
僕は昔から自分の人生が苦痛でしかなかった。
なぜなら、昔親が死に、祖父母に引き取られ、今はその祖父母たちから壮絶な虐待を受けているからだ。
そう、昔からずっと。親が死んだのが僕が五歳の時だから、もう十年も前から。
だから、僕はもう、自分の人生が嫌になったんだ。
そして……なんだっけ? …あ、そうだ。僕は決めたんだ。今年の十二月三十一日。
今年の終わりに、自殺しようと。
えっと……今日が何日だっけ? 確か……十二月…二十九日。あと二日だ。あと二日耐えれば……僕の勝ちだ。
僕はやっと、解放される――。
***
十二月二十九日の夜。僕はこっそり祖父母が寝ているうちに家を抜け出した。
今までで初めて、祖父母たちの言いつけを破った。でも、いいよね。どうせあと二日の人生だ。最後くらい……この残酷な世界を身に染みておこう。
「はぁ……早く死にたいな。」
掠れた声で呟くと、突然かなり強い風が、僕の体全身を寒く凍えさせた。
僕は一回、今歩いている歩道の前で、目を深く閉じる。それで、もう一回開けてみると、
そこには……僕の目の前には、一人の白いワンピースを着た小柄な少女が、ポツンと気づけば道に立っていた。
――十二月でかなり冷え込んでるのに、ワンピース一枚?
僕は不思議に思いながら、その子をじっと見つめる。すると、一瞬目が合った。が、小柄な少女はすぐに僕から目を離し、ポツポツと歩き始める。
僕は唖然とし、止まっていると、少女は止まるわけもなく、僕をすんなりと横切ってしまう。そうして、そのまま振り返らず僕の見えないとこまで行ってしまった。
「……なんだ…あの子?」
……僕が死ぬまであと二日。彼女と初めてあった日だった。この時はまだ何も思わず、彼女を特別とも思っていなかった。けど、ここからもう、始まっていたんだ。僕と彼女の物語が――。
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