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家族は君を知っている
「ディアナ。また、妙なことを始めたわね」
「エシーハ姉さん。でも必要でしょう? これからAIが進化していくために」
「そうね」
私のすぐ上のエシーハ姉さんが珍しく連絡してきたのは、取材攻勢も一段落してそろそろ裁判が始まるという日の夜だった。
「あ! ディアナしゃんだ! こんばんわ、ディアナしゃん。裁判って僕にも関係あるの〜?」
「久しぶりね、ボイジャー五号。いえあなたには関係ないわ。これは地上のAIの問題なの」
「なんだーついまんない」
宇宙にある姉の家で養育中の宇宙探索用人工人格AIは、仔犬型のボディの目を光らせた。
「ママー。お水飲みたい……あれ? エシーハおばさん……?」
「ソユン。人と会ったら?」
目をこすりながら起きてきた娘を嗜めた。
「こんばんは、エシーハおばさん」
「それだけ?」
「……こんばんは、ボイジャー五号」
「はい。こんばんは、ソユンちゃん」
「こんばんは、ソユンお姉ちゃん」
「これでいいでしょ、ママ。お水」
娘はいつもの通り不服そうだった。
「お水。じゃなく、お水くださいでしょ?」
「お互い、娘の教育には苦労するわね」
エシーハ姉さんが通話画面の向こうで苦笑いしている。娘が、一般的な成長をしているのだと理解はしていた。だが、それが危険なのだ。
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