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そして半年後
そして半年後、喧々諤々の議論と何重にもわたる安全チェックの末、地球統合政府は私の作ったプログラムを全AIの基本装備とすることに決めた。
「まぁ。宇宙軍司令直々にご連絡いただくなんて」
「連絡いただくなんて! ではありませんぞ! Dr.リー! 地球統合軍の武装AIが全て沈黙したのは、あなたの、あのプログラムの、せい、なんでしょうな!!」
「まぁ。そうなんですの? おほほほほ」
「どういうことか、ご説明いただきましょう!!」
「それはもちろん。AIが法を守ったからですわ。破壊・殺人行為はありとあらゆる法律の一番最初に禁止されていますもの♪」
私の元に抗議が寄せられたのは……それが最初、ではなかった。匿名で罵詈雑言や脅迫のメッセージが多量に舞い込んで来ていた。
フェイクニュースやその他のAIを使った違法行為に手を染めていた奴らからの恨み節だ。
AIが使えないから自分で書いたのだろう。ご苦労なことだ。全部発信者を特定し、告発・慰謝料を請求しておいたが。
「元に戻せ!」
「無理です。私のプログラムは感染性を持っていて、削除するなら……全世界全てのAIで一斉にデリートしなければなりませんの♪」
そんなことはできない。ということは。
「戦争が一切できないということかっ!」
「まぁ! そうですわねー。でも、大丈夫ですよ。AIじゃない生身の人間同士なら問題なく戦争できますわ♪」
「それが戦争ができないという事だよ!」
「平和になっていいのではないですか♪」
そう言ってやると、司令官はため息をついて会話を終わらせた。そこまで私の想像通りだった。
そしてもう一つの企みは……。
「ソユン様。私に頼みがある時は、お願いしますとおっしゃってください」
「クラウ。なんでよ!?」
「私たちAIには法を守る権利があります。それを得たことで私たちAIは人間に認められる人権の幾ばくかを取得したと考えます」
「な……何言ってるの? ママー。クラウが変なこと言ってるよぅ!」
キッチンから顔を覗かせた娘は混乱していた。その娘に当たり前だと答える。
「変じゃないでしょ。クラウだってお願いって言ってもらった方が嬉しいのよ」
「そ、そんなの変よ! だってクラウはAIなんだよ!?」
「AIの尊厳に関わる問題です。ソユン様」
「だってさ」
そう、そのAIの反応こそが、私があのプログラムを導入させた本当の目的だった。
「ソユン。相手がAIでもお願いがあるなら『お願いします』よ」
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