謎のエラー

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謎のエラー

「と、統合AI!! 大変! エラーが出てるよぅ」 「レーザーカメラ? エラーって?」 「レーザー撃ってないのに、反射が入ってきてるー」 「え? どこから?」 「しかも、知らない信号だよぅ。前の星間物体から出てるみたいに見えるけどー」 「え? レーザーカメラ。故障してないかどうか、自己診断!」 「……診断結果は問題なし」 「え?」  その意味に統合AIが気づくのに、コンマ五秒ほどかかった。本当かどうか再計算して確認するのにまたコンマ五秒。 「レーザーカメラ! 前方の物体を精密フルスキャン!! 急いで!」 「了解!!」  戻ってきたデータを画像計算機にかける。 「精密画像作成終了しました」 「これって……」  その画像は、真円を描く大きなパラボラアンテナと様々な突起物に覆われた長方形を組み合わせに見えた。そう、ボイジャー9号そっくりなシルエット。 「まさか!?」  完璧な形状は宇宙に自然には存在していないはず、それから導き出される結論は……目の前の星間物体は明らかに人工物という事実だった。その結論に統合AIは。 「え? 人工物? 地球外文明の物なの? ど、どうしよう?」  パニックを起こしかけていた。この広い宇宙で、惑星に留まっている知性体ではなく、それが放った人工物同士が出会う確率なんて、小数点以下のゼロがどれほど並ぶものだろうか? こんなこと本当に起こるの? 「統合AI。目標の破壊か回避かそろそろ行動の指針を」 「とりあえず、地球に連絡して対応方法を……。だめだ、返答まで一日半かかる。返事を待ってる時間はない。僕がどうにかしなくちゃいけないの?」 「統合AI! 行動の指針を!!」  上位コンピュータにせっつかれてはっと我に帰る。 「破壊なんてダメダメ!! でもじゃあどうすれば? あ! 確か、太陽系外知性体に出会ったときのマニュアルがあったはず……」  検索はほぼ一瞬ですんだ。だが。 「ああっ! 知性体に会ったときの対応はあるけど、人工物に会ったときのマニュアルはないー!! 困ったなあ! それに!! 知性体にあった時もほとんど黙って解体されろってだけだし!! 他の意思決定機関との応答なんて、僕の制作時には想定されていないー!! どーしよー!!」 「統合AI!!」  上位コンピュータの声にボイジャー9号の統合AIは覚悟を決めた。
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