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アナタは誰
「え? なんで? うんん……? こっちも同じ行動をやってみよう……。レーザーカメラ! もう一度精密走査」
「と! 統合AI! アーチフェクチャーが体勢を変えているよ!!」
「え?」
「パラボラアンテナがこっち向いてる!」
こっちと電波通信を行おうというの? 確かにレーダー光のパルス通信よりそっちの方が大容量の交信が行えるけど……。こっちも同じ行動をとるべき? でもそうしたら地球との交信が……。
「サブエンジン! アーチフェクチャーと交信可能な状態に姿勢制御した場合に、元の体勢に戻る分の燃料は残ってる?」
地球との交信はあったとしても1日半後だ、それまでに姿勢を戻せたら、特に問題はないけれど……。
「後、二度の姿勢制御は行えます。ですが、それで最後です。二度姿勢制御を行うと燃料は零%に」
どうしよう? 考える時間はあまりない。 統合AIはコンマ一秒考えて、決断した。
「えっと! サブエンジン姿勢制御!! こっちもパラボラをアーチフェクチャーに!!」
「姿勢制御開始……。終了」
ボイジャー9号が姿勢を変え、パラボラアンテナをアーチフェクチャーに向けた瞬間、ウォーンというノイズが耳に飛び込んできた。まあ、それもボイジャー9号の擬似感覚で、実際にはパラボラアンテナに合わない周波数の通信が飛び込んできただけだ。
「うう、きっつーい」
周波数は少しずつ変化しているようだった。しばらく雑音に耐えていると、ボイジャー9号に使える周波数に変化した。
トン、トン、トン。ツー、トン、ツッツー。トン、ツー、ツッツー。トン、トン、トン。
電波信号がさっきのパルス信号と同じものを伝えてくる。
「通信機器、アーチフェクチャーに位置合わせ! 信号発射!」
トン、トン、トン。ツッツー、ツー、ツッツー。トン、ツー、ツッツー。トン、トン、トン。
トン、トン、トン。ツー、トン、ツッツー。トン、ツー、ツッツー。トン、トン、トン。
直後に返信が返ってくる。それはこちらの通信が向こうのパラボラにも受信できた印だった。偶然? でも!
「通信できる!? それに相手の知性の方が高いみたい……。よかった」
周波数を変位させて相手に合わせるなんて、ボイジャー9号にはできない芸当だ。相手はそれができるぐらいの適応性は持っているみたいだった。
「もしかして、他の知性体との交信を目的に作られた探査機なのかな? そうだ! 自己紹介しなくちゃ!!」
統合AIは自身がアナログのゴールデンレコードの他に、デジタル版も載せているのを、とりあえず創造主達に感謝した。それをアーチフェクチャーに送信する。
「僕のプログラムの基本ものっけてたっけ」
それも送って、統合AIはなにが起こるか楽しみになってきた。
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