2人が本棚に入れています
本棚に追加
目が覚めると
広い宇宙で僕は一人ぼっち、地球からも遠く離れ、それが寂しいってわけじゃないけど。
「ふぁあ、何?」
感覚器官からの刺激でボイジャー9号の統合AIは起こされる。
「どったの? レーザーカメラ」
「大変だよ! 統合AI!!」
慌てたようなパルスがボイジャー9号の統合AIに向かって走ってきた。
まあ、慌てたようなというのは統合AIの味付けだ。実際にはただの電気信号。その信号が示す画像には……。
「障害物?」
「そう!」
ボイジャー9号の現在位置は星間宇宙、辺りを照らす恒星はなく周囲は暗黒だけのはずだった。でも、地球時間で一時間ごとに行われる前方照射、その結果としてレーザーカメラが持ってきたデータには、なんの反射物も無いはずの宇宙にぽっかりと、ボイジャー9号とほぼ同じ大きさの物体が写っている。
「こんなところに星間物体? レーザーカメラ、もう一度レーザー発射。目標の移動スピードと向きを確認」
「了解!」
ぴっ。走査レーザーが発射される。しばし間をおいて。
「こっちに真っ直ぐ向かってるよ!」
「地球時間で、一時間後に接触!」
「破壊装置射程距離まで三十分!」
「接触回避なら、十分後に五秒間のサブエンジン噴射!」
レーザーの反射が帰ってくると、そのデータを解析した結果を、色々な下位コンピュータが一斉に吐き出してくる。
「うーん。破壊した方が楽かなぁ、サブエンジンは燃料残しときたいし……」
統合AIが下位コンピュータの計算結果をつらつらと眺めていた時だった。ピーン、高い警報音がなった。のも、ただ単に統合AIがそんな気がしたというだけだが。
「統合AI!」
「え? ジャイロスコープ? なんで君が起きてるの?」
「現在、本機の速度がコンマ二%ほどダウンしています。一分前から減速中」
「え? なんで? こんなところで減速? だって何も無いよ? 観測装置群! 現在の外の状況は? なんか変わった事ない?」
「プラズマ観測装置、変化なし」
「低エネルギー荷電粒子観測装置、変化なし」
「磁場観測装置、変化なし」
「宇宙線観測装置、変化なし」
「全方位レーダー変化なし」
「光学カメラ、変化なし」
「ええ!? 恒星系に入った訳でも宇宙チリでもないの? じゃあなんで?」
減速する可能性など、この大きな宇宙では数少ないはずだった。すなわち、恒星からの恒星風かチリの雲に突入したか。でも、それは違うと観測機器群はいっていた。そして……。
最初のコメントを投稿しよう!