目が覚めると

1/1
前へ
/7ページ
次へ

目が覚めると

 広い宇宙で僕は一人ぼっち、地球からも遠く離れ、それが寂しいってわけじゃないけど。 「ふぁあ、何?」  感覚器官からの刺激でボイジャー9号の統合AIは起こされる。 「どったの? レーザーカメラ」 「大変だよ! 統合AI!!」  慌てたようなパルスがボイジャー9号の統合AIに向かって走ってきた。  まあ、慌てたようなというのは統合AIの味付けだ。実際にはただの電気信号。その信号が示す画像には……。 「障害物?」 「そう!」  ボイジャー9号の現在位置は星間宇宙、辺りを照らす恒星はなく周囲は暗黒だけのはずだった。でも、地球時間で一時間ごとに行われる前方照射、その結果としてレーザーカメラが持ってきたデータには、なんの反射物も無いはずの宇宙にぽっかりと、ボイジャー9号とほぼ同じ大きさの物体が写っている。 「こんなところに星間物体? レーザーカメラ、もう一度レーザー発射。目標の移動スピードと向きを確認」 「了解!」  ぴっ。走査レーザーが発射される。しばし間をおいて。 「こっちに真っ直ぐ向かってるよ!」 「地球時間で、一時間後に接触!」 「破壊装置射程距離まで三十分!」 「接触回避なら、十分後に五秒間のサブエンジン噴射!」  レーザーの反射が帰ってくると、そのデータを解析した結果を、色々な下位コンピュータが一斉に吐き出してくる。 「うーん。破壊した方が楽かなぁ、サブエンジンは燃料残しときたいし……」  統合AIが下位コンピュータの計算結果をつらつらと眺めていた時だった。ピーン、高い警報音がなった。のも、ただ単に統合AIがそんな気がしたというだけだが。 「統合AI!」 「え? ジャイロスコープ? なんで君が起きてるの?」 「現在、本機の速度がコンマ二%ほどダウンしています。一分前から減速中」 「え? なんで? こんなところで減速? だって何も無いよ? 観測装置群! 現在の外の状況は? なんか変わった事ない?」 「プラズマ観測装置、変化なし」 「低エネルギー荷電粒子観測装置、変化なし」 「磁場観測装置、変化なし」 「宇宙線観測装置、変化なし」 「全方位レーダー変化なし」 「光学カメラ、変化なし」 「ええ!? 恒星系に入った訳でも宇宙チリでもないの? じゃあなんで?」  減速する可能性など、この大きな宇宙では数少ないはずだった。すなわち、恒星からの恒星風かチリの雲に突入したか。でも、それは違うと観測機器群はいっていた。そして……。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加