愛ペット

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 まさか、隼人君のデータを学習させたのだろうか。  普段の人の行動なんて、動画に撮ったりしないから、例えば、俺の母のデータなんて残っていない。記念写真がいくつか残っているだけだ。ただ、最近なら、初めての子どもが生まれた人は動画を撮りまくって、学習させるデータが揃うのかもしれない。  うさぎを飼っていた友達がうさぎ型の愛ペットが発売されるのを待ちきれなくて、犬型を買って、AIに学習させると言っていたが、うまくいったかどうかは聞いていない。  ボディと違う意識があるのは不幸じゃないんだろうか。  いや、AIって、意識があるわけじゃないよな。ただ、動作を学習して真似ているだけで、自我があるわけじゃない。  だから、不幸も知らなければ、幸福も知らないはず。  そう思うのに心が落ち着かなかった。  野島さんはこのままで大丈夫なのか。でも、俺に何ができる? ただの勘違いかもしれないのに。  ニャー。  大福が大声で鳴いた。  俺はとりあえず、餌入れにカリカリとそっくりなエネルギー剤を入れた。  大福は本物のように、ガツガツと幸せそうに食べ始めた。
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