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AIロボットが全国に普及したのは数十年前だ。
その経緯は学校でも習わないし詳しくは知らないが、僕世代にとっては既にとても身近な存在だ。
買い物に行く姿や洗濯物を干す姿、小学生や幼稚園児のような小さな子供の送迎をする姿…など、彼らを見ない日など無いのだから。
だからといって一家に一台ロボットが居るのが当たり前。…という訳ではなく、むしろ居ない家庭の方が断然多い。
実際、僕のクラスメイトの友達でも、ロボットが居るのは一人だけだ。
というか、学年で僕らだけだ。
見た目は個体差はあるが、等しくロボットと分かる見た目だ。
スマートに動き難なく走るが、皮膚があるわけではなく、目はあるにはあるがゴーグルのような物が装着されていて、明らかに機械感がある。
服を着ているし、喋れば口が動くし、笑うし、怒れば頬が膨れたり尖ったりもする。
確実にロボットではあるが、人からかけ離れてもいない。
それが僕らの世界のAIロボットだ。
「おはよケイ。」
「おはようシュン。」
「てか聞いてよ。うちのアホが朝から『トレーニングダー!?』とか言い出してさ~。」
「あはは…。」
彼が噂のクラスメイト。名前はシュン。
彼の家のAIロボットは男性型で、正直かなりキャラが濃かった。
なんというか、熱血漢なのだ。
彼が朝イチに愚痴ったように、何かにつけては『トレーニングシマショウ!!』…と強要してくるのだ。
現に僕もその現場を目撃した事がある。
それは高一の春、入学式のこと。
シュンの下校が心配だったのか彼は校門でシュンを待っていた。
そして緊張の入学式を終えたシュンを見付けるなり、ニカッと白い歯を輝かせ言ったのだ。
『緊張シタデショウ!?』
『げっ!?なんでお前…こんなとこで』
『サアイイ汗カイテリフレッシュ!!
サア!!ランニングシマショ』
『いいから大丈夫だから!?
恥ずかしいからお願いだから帰れお前!?』
上級生やクラスメイトにクスクス笑われ、本当に可哀想だった。
息を荒らしながらロボットを追い払ったシュンに、僕はなんともいえない気持ちになり話しかけた。
『……分かるよ。』
『え!?』
『うちにも居るから。』
これが僕がシュンと仲良くなったきっかけだ。
ロボットが居るが故の苦労や笑い話、あるある話で盛り上がれるのは嬉しいし、なんだかんだ、シュンのトレーニングマシーンには感謝してる。
「お前んとこのはいいよなー!
ご飯とかも作ってくれるし?、女性型だし!」
「でも本当にドジだよ?
語尾に『大好き!!』ってつけられるの想像してみなよ。…かなり恥ずかしいからね。
家の中ならまだしも…外でも容赦なくて。」
「それだってうちのアホよりマシだよ。
寝る前に『I love you 』…ってドヤ顔で白い歯をキラーンさせて言われてみ?」
「…負けたよ。」
AIロボットは皆個性的だ。
家事をやるタイプが居れば、介護をするタイプも居るし、単にお喋りなタイプも居る。
…本当、なんでこんな個性がバラバラなロボットが全国区で流通したんだろうと、疑問が拭えない。
僕らはもう卒業間近の高三だが、学校では未だにAIロボットについての授業は無い。
…本当に全国区で流通してるのだろうか?
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