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 やがて冬休みに入り、僕は新生活の準備に追われた。僕は高校を卒業したら自立しようと考えていたからだ。 「ケイ?、トイレットペーパーも送る箱に詰めといたからな?」 「え、なんで?、あっちで買えばよくない?」 「マダマダデスネケイ君! 当日ハ忙シクテ買イ忘レシヤスイモノデス! 流石ハ父様デス!」 「ふふ!、そういうことだ。」 「ふーん?」  少し気が早いかとも思うけど、後でバタバタするくらいなら…と、父さんも協力してくれた。 勿論、家政婦ロボットも。 二人はいつも笑顔で、僕の門出を祝してくれた。 彼女は毎日毎日、飽きもせずに言った。 大声で、笑顔で、『大好き』と。  時は流れ卒業式当日。 父さんは家政婦ロボットを連れて参列してくれた。 かなり目立っていたが、僕は嬉しかった。 本当に二人には感謝しかないから。 数日後には家を出るということもあり、立派に胸を張って卒業証書を受け取ろうと気が引き締まった。 それはシュンも同じだった。 母親と例のトレーナーロボットが参列している姿に、二人でクスクスと笑った。 『盛大な拍手で送りましょう。』  そして迎えた閉式の言葉で、僕らは拍手の中順繰りに体育館を後にした。 一度クラスに戻り皆で写真を撮ったりして互いの門出を祝うと、僕とシュンは互いに少々はにかみつつ、二人で校門へ向かった。 「さーてと!、アホが大声で走ってくる前に逃げるか! あいつ、マジで胴上げとかしてきそうだし。」 「アハハ!」  僕にもそれは難なく想像できた。 嬉しくないわけではないけれど、皆の前で『オメデトウ!!』と歯を光らせながら胴上げされるのは流石にキツイだろうと。 僕も『オメデトウ大好き!!』とハグをされるのが明白で、やはりそれは恥ずかしいので避けたかった。  だが家族は校門で待っていた。 予想に反してとても大人しく、駆け寄っても来ず大声で名前を呼ばれもせず、僕らは微量な違和感を感じつつも家族と合流した。 「オメデトウ、ケイ君。」 「ありがとっ?」 「オメデトウ、シュン。」 「いきなり呼び捨てかよこいつ!」  驚く程大人っぽく迎えてくれて、なんだかムズ痒くて二人して逆に声を張ってしまった。  だが僕らは同時に気が付いた。 互いの親が、ボロボロとあり得ないほどに泣いていたという事に。
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