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「……ケイ君?」
僕らが両親の涙にリアクションを取るよりも早く、彼女は僕の前に膝を突いた。
そして本当に優しく頭を撫で、微笑んだ。
「ケイ君、卒業オメデトウ?」
「え?…と、…うん。」
「…私ネ?、ケイ君ノ立派ナ姿ガ見ラレテ…、本当ニ幸セダヨ?」
「…ど、どうしたの急に。」
彼女が喋れば喋る程に、鼻腔がくすぐられた。
彼女に朧気な母の記憶が重なり、僕はだんだんよく分からなくなってきた。
だが彼女は続けた。
いつものような大声ではなく、とても優しい声で。
「コレカラ色ンナ事ガアルト思ウ。
デモ、ケイ君ナラ大丈夫。…信ジテル。」
「…えっと、」
彼女は僕をゆっくりと腕の中に招いた。
そしていつもの言葉をくれた。
「大好き。」
ガ…チャン!!
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