7

1/1
前へ
/9ページ
次へ

7

 シュンは母親が震え泣いていて、それが余りに違和感で放心してしまった。 だがそんな母の前に彼が立ち、優しく口角を上げた。 「シュン。」 「な、なに。」 「己ヲ鍛エルコトヲ怠ルナ?」 「…!」  シュンはロボットの言葉に目を大きく開いた。 何故ならその言葉は、シュンの父親の口癖だったからだ。 愕然と目を見開いたシュンの頭をそっと撫で、彼は続けた。 「人ヲ騙シテ傷付ケテ、ソウシテ利ヲ得ルヨウナ人間ニダケハ、絶対ニナッテハナラナイ。」 「… ……」 「オ前ハオ調子者ダガ、優シイ。 ソノ優シサハ誰カヲ笑顔ニシ、守ルタメニアルンダ。」 「……お父さ…ん?」  彼はそっと口角を上げると、シュンをしっかりと抱き締めた。 冷たいボディーは、亡くなった父親の背広を着ていた。 「愛してる。」 「…!!」 ガチャ…ン!!  二つのロボットはほぼ同時に地面に崩れた。 まるで役目を終えたかのように、壊れた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加