金平糖と姫のお心遣い

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金平糖と姫のお心遣い

子守り役を仰せ使った私は、 いつ何時も姫のお傍から 離れることはなかった。 姫は、とても活発でよく城外へ自分を 連れ出すようにと言っては私を困らせた。 「昭之助、城の外では『市場』なるものが  あると聞いた。わらわもそこに行きたいぞ」 「姫……それは、無理でございます。  危のうございます」と私が言うと 「昭之助は、年若いくせに、  爺のような物言いをするのう」  と姫は口を尖らせた。 「しかし、やはり、危のうございます」  と言うと、 「じゃあ、昭之助が  わらわの代わりに行って参れ、  それで許す」  と姫は可愛い笑顔で私に頼んだ。 「わかりました・・では、平蔵と言って参ります」 と私は姫に返事をした。 平蔵とは、大木家に使える家臣の息子で 昭之助とは幼少の頃から共に育ってきた。 心許せる友。 昭之助は平蔵を連れて『市場』に出向く。 「昭之助、姫様のお使いね……で、わしも  それに付き合わせられてるのか?」  と平蔵が聞いた。 「ああ、すまぬ。一人で行くのは  私もいささか心もとないのでな」 「そうか……それで、市場の様子と  お土産をご所望されたわけだ」 「ああ、珍しいものがいいそうだ」 「そうだろうな、綺麗な着物もかんざしも  櫛もすべてお持ちになってるからな」 二人は市場の中を歩き回る。 行商人と客で活気がある市場、 珍しい物が店先に並ぶ。 二人は、珍しい品々を手に取り 楽しい時間を過ごした。 「あ……これは、なんと美しい。  平蔵 そう思わぬか?」  と昭之助は小さな袋を手に取った。  袋の中からあるものを取り出すと、  彼は目を細めた。 「まっこと美しく綺麗じゃ」と平蔵も答える。 懐から銭入れを取り出した私は、 商人に銭を渡すとその小さな袋を 大事そうに着物の懐に入れた。
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