2.友達として?

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「おー!君が叶羽の同級生だった子!?佐々木くんっだったっけ?昨日の飲み会にいたよね!ほんと偶然だね~」 「え?はい、誰ですか?」 「えー!仮にも昨日同じテーブルにいたのに!叶羽の友達の俊太です!よろしく~」  目の前にいる佐々木君に俊太は迷いなく話しかける。例えるなら、まるで散歩中に人間に会った尻尾を振る犬のようだ。  さすが人見知りもしていない。佐々木くんの方はどうなんだろう。相変わらず淡々としているけど。 「…よろしく」 「佐々木なに君?」 「憂です。うい」  俊太と会話しているはずだけど、時々佐々木君からの目線を感じてドギマギしてしまう。この人の目は、真っ黒で透明で吸い込まれる感じがするから。 「えっ名前可愛すぎ!なっ、叶羽!」 「うん…佐々木君もご飯?」 「そう。午後から一コマあるから、その前にご飯食べに来た」  佐々木君の返答を聞いて、俊太は頭に電球が浮かんだような顔をして、こっそり僕に耳打ちをしてきた。 「叶羽、お前がいいなら憂君も一緒に飯食べるか誘う?」 「え…あ、うん。俊太はいいの?」 「いいよ全然!」 「あ、佐々木君…僕達も今からご飯なんだけど、よかったら一緒に食べない?」 「うん、食べる」  僕の方が少し恐る恐る聞いたのに、返ってきた答えはあっさりすぎて、むしろ即答に近くて間抜けな声が出そうだ。高校の時話したことなかったけど、佐々木くんって意外とこんな感じなんだな。 「よし!じゃあ、あそこのテーブル座ろ!俺取ってくるから、叶羽ー俺のBランチよろしく!」 「あ、分かった。ありがとう、俊太」  俊太すごいな、フットワーク軽いし打ち解けるのも早い。ナチュラルに佐々木くんのこと名前呼びしてるし、会ってすぐご飯一緒に食べようとしてくれるなんて…。  再会したって話してたから気にかけてくれたのかな。そういえば僕が俊太と初めて会った時も、学食で1人でいる時に話しかけられて一緒にコーヒー飲んだんだっけ。  ていうか、急に2人だけになった。注文パネルで選んでるだけだけど。 「あ…佐々木くん昨日は、その、あの後大丈夫だった?夜も遅かったけど…」 「別に大丈夫だよ?終電で帰ったし」 「そっか…ならよかった。あ、何食べるか決めた?」 「うん、決めた」  佐々木くんと一緒にパネル注文をしてから受け取り口へ向かう。なんだか変な感じだ…。あの時見ただけの彼と、同じ大学で今一緒にこうやって過ごしてるなんて。 「おーありがと叶羽!憂くんも!」 「いいよ、はいBランチ」 「サンキュー!うまそ~」  頼んだランチを持って、丸いテーブルに自然と3人で三角形になるように腰掛けた。後から来た佐々木くんは僕の左側にお盆を置く。 「いただきまーす!あれ、佐々木くんもハンバーグ定食?」 「おっほんとだ」 「うん、ハンバーグ。何となくいつもこれ」 「そいうや叶羽もよくそれ頼んでるよな~」 「あー僕もなんか無性に食べたくなるんだよね。何となく選んじゃう」  更に変な感じだ……佐々木くんと同じテーブルを囲んでご飯を食べるなんて。どうしても僕の脳裏に浮かぶのは、高校の時の印象だから、隣でご飯を食べてる姿がちょっと不思議だ。 「原崎くんも?」 「うん」 「じゃあ、俺と一緒だね」 「……あ、うん」  びっくりした。口に放り込んだハンバーグがつっかえるかと思った。どうしてこんなに息を呑んでしまうんだろう。  「一緒だね」と言って首を傾げた佐々木くんは、僕を見て口角をニヤリと少し上げていた。  そして、傾げて一瞬彼のシャツの隙間、首元に見えたのは…赤くてついたばかりのような“痕”だった。  初めて見る表情と彼の色んな姿は、想像もつかないし想像以上で…美味しいハンバーグは、なぜかいつもより飲み込みづらい。
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