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1.再会
“ごめん、別れてほしい”
彼氏からのこの文字を目にしたのはこれで何度目か、と深いため息がこぼれ落ちる。大学内にある賑わうカフェで1人。
僕、原崎叶羽は手に持ったスマホを凝視した後テーブルに項垂れた。先程まで口にしていたアイスティーの味も感じなくなるほど、虚無感に襲われていた。
それもそのはず、3ヶ月付き合っていた恋人にたった今振られたのだ。LINEの文面で一言なんて呆気ない終わり方で。返信もできず体も動かず、テーブルに頭ごと突っ伏したまま数分。
今回も振られた……と頭の中でこれまでのことを思い返す。何がダメだったのか…思い出せば出すほど、じわじわと悲しさが込み上げてきてしまう。そして、また2回目のため息が出そうになった時、肩にポンッと誰かの手が優しく触れた。
「叶羽、どうした?寝てんの?」
肩を叩いてきたのは、同い年で友達の俊太だった。俊太は茶髪でふわふわな髪を揺らして、子犬のような目で僕を不思議そうに覗き込んでくる。
入学した頃は、高校よりも視野が広がり、人数も多いこの大学生活で友達ができるのか不安だったが俊太のような友達ができてよかった…と安堵するほどには、メンタル崩壊直前だ。
「俊太…僕、また振られた…」
「えっ!?あの優しそうだったメガネの彼氏?」
「うん。さっき別れてほしいってLINEきた…。またダメだったぁ…」
このままここで大声で泣き出したいくらいだが、周りも人が多いしと一応配慮した上で、僕はグズグズと小粒の涙を目から流した。俊太が来てくれたことによる安心感のせいでもある。
「おいおい~泣くなよぉ。本当に叶羽はよく振られるな。なんでかなー?こんないい奴なのに」
「あー…どうしたらいいんだろう、僕」
高校生の時から僕は男女共に友達も多く、それなりに恋愛もしてきた方だが、なぜかいつも振られてしまうのだ。だから恋人ができても1年も続いたことがない。
好きな人とずっと一緒にいる…そんな幸せを掴みたいと思い、毎回今までの反省を自分なりに活かして付き合うが、いつもこのように振られ続けていた。
「うーん…とりあえず傷心してる時は考えすぎないことだぞ?あ!!」
「ん?なに?」
「今日この後暇ならさ、俺と一緒に気紛らわしに行かね?」
俊太は爽やかにウインクをして、僕の肩に手を回した。その胡散臭い笑顔に、若干の違和感を覚える。
「気を紛らわしに…ってどこに?」
「まあまあ!飲みに行こうってことだよ!」
「まさか…」
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