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まさかと思った予想は的中。授業が全て終わった後、俊太と僕は大学を出て繁華街へと向かったが、その道中で俊太は今から合コンへ行くと白状した。
最初からそんな気はしたが、今回は人数が足りなく、そして合コンというよりはただの男女の飲み会という感じらしいので、「まあいいか」と承諾した。
「もう…最初からそう言えよー。怪しいなとは思ったけどさ!」
「ごめんごめん!でも今回のは、がっつり合コンっていうよりは、友達繋がりの子達と楽しく飲もうって感じの会だから叶羽の気分転換になるかなと思ってさ」
「…人数も足りなかったし、丁度よかったんだろ」
「まあまあ!男女5人ずつだし、あれだったら1次会で抜けても大丈夫だからさ。それに、こんな時こそ賑やかな所に行って気紛らわした方がいいと思うぞ」
「ま、まあ…それは確かに」
普段なら合コンなんて行かないが、正直今は1人でいるのは気が滅入るし、大人数で賑わう中にいた方が気が紛れるのは有りか…と俊太の提案に乗ることにした。
別に女の子を毛嫌いしている訳ではないし、友達付き合いなら大丈夫だ。
半ば強引だが、この俊太のノリに助けられている部分もたまにはあるなと肩を落とす。
「あー俺も恋人欲しいなー。そういえばさ、叶羽は自分がゲイだって自覚したのいつなの?」
「なに?急に?」
「うん、なんとなく今気になって!俺と出会った頃は既にそうだったよな?」
「え?うーん…そうだな。えっと、確かそうかもって思ったのは高校2年の時かな…」
「へぇー!その時、好きな男子がいたとか?」
「いやー…そういう訳じゃなかった気がする」
話しながら、ふと頭の中で一瞬過去の記憶を遡った。
あの時の…もう二度と味わうことのない放課後。教室の匂い、汗で張り付いた学生服のシャツ。そして…
「あは、でもあんま覚えてないや」
「ふーん、そっか」
夕暮れのオレンジに染まっていた、彼の表情…でもそれ以上は、鮮明に思い出さないようにした。3年前のあの時…自分がゲイかもしれないと自覚した時のことを。
“彼”のことを思い出すと、もう一度…なんて無謀なことを思ってしまう時があるからだ。
「あ、着いた着いた!この居酒屋。もうみんな来てるって」
一瞬ボーッとそんなことを考えていた僕は俊太の言葉を聞いて、記憶のモヤを消すようにぶんぶんと頭を振った。
そして賑やかな店内へと踏み入れ、既に若い男女が集まっている奥のテーブル席に近付いた。
「あー!きたきた」
「お待たせー!ごめんね、ちょっと遅れちゃって」
「全然大丈夫だよぉ」
見たところ、人当たりの良さそうな男女がテーブルで混ざるように腰掛けて、僕と俊太を迎え入れてくれた。
「好きなとこ座って~!こっち空いてるよ!」
俊太は呼ばれた女の子の隣へすぐさま腰掛ける。僕もどこへ座ろうか…と見渡すと、1人携帯を触っている男の子の隣が空いているのを見つけた。
「1番端だし、そこでいいか」と椅子を引く。
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