6.生まれて初めて

7/8
228人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
ピリリリリリ 「…っんーーー?」  体が重い、というか眠い。なんだろう、部屋の中がなんだか明るい…。  頭がボーッとしたまま、けたたましく鳴り響くアラームを止めようと手を探る。 「…あっ!!!」  時間を見ると、朝の7時。昨日あの後、憂くんの部屋に泊まったんだった!!  明日2人とも一限からあるから、起きたら一緒に行こうって話したな。 「憂くん、おはよ!起きて!」 「んー……」  隣を見ると上半身裸で眠る憂くんが、不機嫌そうに身動ぎをした。布団の中で丸まったり、伸びたりして…猫みたいで可愛い。 「まだ……ねむ……」 「ダメだよー、遅刻しちゃうよ」 「んー…、叶羽くん起こして」 「いいよ、はい!おいで」  両手を伸ばしてきた憂くんをぎゅっと抱きしめて、自分の方へと起こした。  昨日の夜は、あんなにカッコよくて妖艶に感じていたけど…今はどちらかというと子供みたいに甘えてきて可愛い。  ゾクゾクするほど可愛い。 「んんぅ……」 「憂くん…」 「んっ、」  僕にもたれたまま目を擦る憂くんのおでこと、瞼にちゅっと何度もキスをした。さすがにボーッと僕を見ていた憂くんも、だんだん意識がはっきりしてきたようだ。  視点が合わさって、もう一度頬にキスをしたら、恥ずかしそうに口を引き結んだ。 「…おはよ」 「うん、おはよ。シャワー入る?」 「…はいる」 「起きれる?」 「…おきれる」  ああ、可愛い。  どんな憂くんの一面も、奥底にある姿も、誰も知らない部分も、全部僕のものにできるんだって。  そう思ったら、嬉しくてしょうがない。 「じゃあ、僕も入……」  そんな気持ちに浸りながらベッドから出ようと布団をめくる。すると、下着だけを履いた自分の足が顕に目に入って、一瞬固まってしまった。  自分の足という足の至る所に、赤い“痕”が残っているからだ。 「えええ」  慌てて洗面所へ行って鏡の前に立つと、そこにいる自分の体にはやはり。色んなところにくまなく痕が付けられていた。  そうだ…昨日、痕を付けられてる途中で寝落ちしてしまったような。もしかして僕が寝た後もつけてたのかな?  でも、ギリギリ服を着たら人からは見えない所にしかついてない。 「叶羽くん?どうしたの?」 「えっいや…、すごいたくさんついてるなって」 「昨日体中につけていいよって言ったでしょ?」 「うん…」 「一緒にシャワー入ろ」  背中からハグをしてそう囁いてきた憂くんは…もう昨日の憂君に戻ってる。  そして愛おしそうに、僕の首に触れるだけのキスをした。 「…嬉しくて、沸騰しそう」 「っふっ、あははは!沸騰するって…」 「な、なんで笑うの!」 「ううん。叶羽くん面白いなーって」  僕に見せてくれた、くしゃっとした無邪気な笑顔。  もう、全部独り占めしたいくてしょうがない…。 「でも、服着たら見えないね」 「うん。見える所にはつけない」 「なんで?」 「キスマが見えたら、他の人にエロい目で見られるかもしれないでしょ。叶羽くんをそういう目で見られたくない」 「えー…そんなことな……」  いや、そっか。  憂くんと再会してすぐの頃、一緒にご飯食べた時に憂くんの首筋にキスマが見えて…どうしようもなくドキッとしてしまったのを思い出した。  確かに、それだけで余計に色っぽく見えてしまった。 「そ、そっか。そういうものかな」 「うん、だから俺にしか見えなくて、俺しか触れない所につけるの。服の下はそうなってるんだって思ったら…俺だけが叶羽くんを独占してるって実感するでしょ」 「…っう、うん」  さっきまで眠そうな子供みたいだったのに、ずるい。  僕の心臓がもたないよ。 「あ!時間やばい!早く入ろ!」 「わっ待って待って!服!」  そうだ…!それと、今日行ったら俊太にも報告しなきゃ!
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!