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あれから準備を終えて、2人で家を出て大学へ向かった。一緒に行動するのは当たり前だったのに、恋人になった後はなんだかむず痒い。
「今日、叶羽くんのが遅いよね?」
「うん。そうだね…3限まで受けるから」
「じゃあ終わるの待ってる」
「えっ!でも結構時間かかるよ?」
「いいよ。一緒に帰りたいから待ってる」
「…うん!ありがとう。僕も一緒に帰りたい」
嬉しそうに笑う憂くんを見ながら歩いていたら、反対側から肩を軽く叩かれた。
「よっ、おはよ!」
「あ…俊太!おはよ!」
振り返ると、俊太がニコニコしながら立っていた。
心配かけないように、俊太には昨日のうちに憂くんの症状が治ったことと無事だったことは連絡したけど、やっぱり付き合ったことは直接話したいから、学校で会って話すと言っておいたんだ。
「おはよう、俊太くん」
「憂くんおはよー!叶羽から聞いたよ。治ってよかったね!」
「ありがとう。俊太くんにも色々心配かけちゃってごめんね」
「いいのいいの!上手くいって俺も嬉しいし」
「えっ!?あの、まだ言ってな…」
「え、付き合ったんでしょ?」
「な、なんで分かったの!?」
「そりゃ分かるよ(笑)そんなラブラブオーラ出してたら」
そんなに分かりやすいんだ…。別に周りに知られてもいいんだけど、パッと見て分かるほどって自分がどんな顔してるか気になる。
「えっと…うん。付き合うことになった。本当にありがとう、俊太。また結局今回も助けてもらっちゃって…」
「いやぁ、よかったー。俺は話聞いただけだし、頑張ったのは2人だから!ねっ憂くん!」
「…うん」
「え?なに?どしたー?その顔は…まさか!拗ねてる!?」
「いや、その!だって…叶羽くんと俊太くんが友達なのは分かってるし…付き合えたのは俊太くんのおかげでもあるって分かってるけど…ちょっと嫉妬する」
「憂くん…」
頬を丸く膨らまして口を尖らせてる憂くんを見て、俊太はポカンとしてから息を吹き出した。
「ふふはは!!!すごっ!今までとまるで別人だね」
「なっ、笑わないでよー!!」
「いやいや、そんな表情初めて見るからさ。本当に治ってよかったなーって」
「…うん。でも、感謝してるんだ。僕の後押しもしてくれてありがとう。あの時俊太くんがああ言ってくれたから…」
「え?後押しって…」
「あーーー!それは、うん!いいの!!もう終わったことなんだから!」
なんだか気になる単語が聞こえてきたけど、俊太はそれを大きな声で遮るようにして「しーっ」と憂君にジェスチャーをした。
何か隠してる様にしか見えないけど…?
後押しってなんだろう?憂くんも俊太に相談してたとか?
「ねぇねぇ、気になるんだけど…」
「いいんだよ!気にしなくて!ああ、まあちょっと叶羽が心配だってこと話しただけだから!ねっ憂くん」
「え、あ、うん」
「…そっか?」
「よし!じゃあ俺西館だから行くわ!2人ともまたなー!」
「あっうん!またね!」
激しく手を振って走って行ってしまった。誤魔化されたような気もするけど…そこまで気にすることじゃないかな?
僕は俊太と付き合いも長いし、友達として信用してるから特に妬いたりしないけど…憂くんは知り合って間もないし、仲良いの知ってるからやっぱり気になるかな。
「憂くん、俊太は本当に友達だからね?」
「…うん。俊太くんは叶羽くんの友達の中で1番?」
「えっ、うん…そうだね。1番の信頼してる大事な友達!これからもそれは変わらないから…だから心配しないで」
「うん…分かった!ごめんね、すぐ嫉妬しちゃって」
「いいよ!憂くんがそうやって不安になることがあったら、僕が安心させてくからね」
「…ふふっ、ありがと」
憂くんが昨日言ってくれたみたいに…僕もこの人の不安とか辛いとか、できるだけ消してあげたい。
そして、これから2人で過ごす新しい記憶で埋めつくしてあげれたらいいな。
「ずっと一緒にいてね」
これからは、その瞳に僕だけ映して。
捕らえて離さないで…。
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