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2.友達として?
「おはよー、叶羽!」
「あ、おはよ。俊太」
「昨日どうだった?楽しめた?」
次の日、眠い目を擦りながら朝から授業のために登校していた。俊太も必修があるらしく、大学構内に入った所で後ろから声をかけられた。
何となく、昨日より俊太の肌ツヤがいい気がするのは気のせいだろうか。
「まあ…うん、楽しかったよ。誘ってくれてありがとな。でも俊太の方こそだいぶ楽しかったみたいだけど?」
「えー?は!?ちょ、まてまて!飲み会は楽しかったけど、断じて女の子とやましいことはしてないからな!」
「はぁー?そんな肌ツヤ良くしてよく言うわ!」
「マジだってー!昨日二次会行って、その後ダーツ行って帰ってきたんだって!久しぶりに女の子と遊んだから肌ツヤいいんだよ!」
俊太の素振りからして、嘘をついてるように見えない。本当にワンナイトとかしてないんだ…と驚いた。あんなに、男達はその気満々って感じだったから、てっきり今回は俊太もかと思ったけど違ったようだ。
まあ、その辺俊太は真面目っていうか、潔癖なとこあるからか。遊んだだけでそこまで肌ツヤ良くなるって、可愛いとこある。
それで言うと、佐々木くんはそんな気全く無さそうに見えたのに、迷わず女の子からの誘いに乗ってたな。
仮にも今から…って時に、あそこまで落ち着いていられるとは。あの解散した後、話していたホテルに行って女の子と過ごしたんだろうか。
「そういえば、昨日いた…誰だっけ。何とかっていう男子、叶羽の同級生だったんだろ?」
「え、ああ、佐々木くんね。聞こえてたんだ」
「そりゃ聞こえるよ、あの距離だし。なになに、懐かしい友達との再会?」
「いや…友達って訳じゃなかったよ。同級生ってだけで、しっかり話したのも昨日が初めてだし」
昨日の帰り際の佐々木くんの姿が思い浮かぶ。真っ直ぐ僕を見ていたのに、見ていないような瞳と今にも消え入りそうな透明さ。
なんで、昔も今も、あの人はこんなにも僕の頭に残るんだろう。
「まあ、でもよかったんじゃない?偶然にも久しぶりに同級生に会えたみたいだし!失恋で悲しむ暇なんてなかっただろ!」
「それは、たしかに…帰ってからも泣く暇なかったな」
昨日の夜は、咄嗟に連絡先交換したけど急に送ることもなくて、ていうか何を送ったらいいか分からなくて。
ベッドに倒れ込んだ途端、酔いも回ってきたから…ボーッとしてたら眠ってしまっていたな。いつもの虚しさを感じる隙間もなかった。
「ほらほら!俺だってまだお前が悲しむ暇与えないからな!」
「うわっ俊太!あぶなあぶな…!」
「行くぞー!寝不足からの授業!昼メシ一緒に食おうな!」
「分かった分かった、眠くてテンションバグってるな…」
あれ、今横を通り過ぎていった人…すごく佐々木君に似てたような。
気のせい?気のせいだよな?まさか同じ大学なわけないよな…。
でも、雰囲気がすごく似てた…まさか…。
「叶羽?どした?」
「あ、いや何でもない…」
振り返っても、人が多いせいでどの人か見失ってしまった。今通り過ぎた人が佐々木くんだとしたら…同じ大学だったってこと?
そういえば昨日一緒に飲んでて連絡先も交換したのに、どこの大学かとか全く話してなかった。佐々木くんも終始静かだったし…。
「行くぞ!遅れちゃうって!」
「わっ、俊太早い早い…!」
今まで知らなかっただけで、同じ大学だったらと思うと、ドクンドクンと心臓が高鳴り出して意味が分からない。
いつもなら、振られたショックでひたすら次の日も落ち込んでいたのに…今はそれを感じれないくらい感情の動きが激しい。
「…原崎くん?」
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