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弐.
〚魔導液補給機、OK。 Support ArmaMent、OK。 バイタル数値 正常、OK〛
「終わったよ、スズル」
アザレアに声をかけられ、MRI型点検機の寝台から起き上がる。
「うん、魔導液補給機も問題なさそうだね。次の闘いも問題なくこなせるよ」
「ありがとうございます」
魔導液補填機――文字通り、魔導液を補填するための機械のことだ。
魔力を持たない人間が半機械の身体となり、腹部に補填機を埋め込み魔導液を注入する。
そうすれば、魔力を持たない人間でも魔法が扱えるのだ。
スズルの場合。Support ArmaMentとも連携しており、魔導液補填機が起動しなければ魔法が使えない上、サムとの連絡も取れない。
「? どうしたの、随分と浮かない顔だけど……」
心配そうに覗き込む綺麗な顔。それは何処からどう見ても非の打ち所のない、仲間を純粋に心配する優男の表情そのものだった。
――可笑しいと思わないか。私のような機械であればまだ話は解るが、彼は“人間”だ。人間であれば多少なりとも“人間らしい変化”が感じ取れる。だが彼には、全くそれを感じ取れない――
こんな時に限って、サムに言われた言葉が脳裏に過ぎり響く。
「何でもありません。それより、この間助けた竜。あれはどうなっていますか?」
「あぁ、それなら心配ないよ。魔法生物課と魔法医療課のおかげで、順調に回復に向かっているようだよ。野生に帰れるのも、そう時間はかからないと思うよ」
「そうですか」
触れられたくなくて適当に先日助けた竜を話題に出してしまったが、思わぬところで良いニュースが聞けたなと胸を撫で下ろした。
「安心した?」
「いいえ、別に」
「素直に言ったら良いのに」
眉間にシワが寄る。
見透かされているからだ。
スズルもまた、ガーディアンズに漏れずコレクターズに奪われ傷付けられた被害者の1人だ。
家族である一族も、彼等が代々護ってきた鬼たちも……
何より命に代えてでも護らなければならなかった、鬼の頭領を……
2年前、全てコレクターズたちによって奪われた。
人間と人ならざるものたちが、誰かに迷惑をかけることなく共存していた平和な日常。
それを己が好奇心と欲望のために破壊し、奪う。
故郷だけでは飽き足らず。
今もなお世界各地被害を拡大し続けるコレクターズたちを、絶対に許さない。
自分がガーディアンズに身を置いているのは、一族と鬼たちの無念を晴らすため。
そして、刈り取られた鬼の頭領の首を取り戻すためにしか過ぎない。
だが、やはり任務の先々で救えた命の朗報を耳にすれば人並みに嬉しくあるのもまた事実であった。
「あ、そうだスズル。この間の件といえば、もう1つ朗報があるよ」
「何でしょう?」
「キミがこの間聞き逃してしまった“鬼の頭領”の首の件、情報を掴めたんだ」
息が、止まるような感覚がした。
何故アザレアが……いや、そんなことはどうでも良い。
思わぬ吉報から、跳ぶ兎のように掴みかかってしまった。
「何処っ、何処にあるんですかっ!?」
「しー、これはまだあまり知られていない情報なんだ。だからこっそりと、ね?」
まるではしゃぐ子供に言い聞かせるように、人差し指を口元に当てるアザレア。
彼にならい、スズルも黙ってこくりと頷く。
「ん、いいこ」
にこりと微笑むアザレア。
メンテナンスルームには彼と2人きりしか居ないのに、息を殺して黙々とアザレアの話に耳を傾けた。
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