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伍.
瞬間、蹴り一閃をアザレアの腹に食い込ませた。
アザレアがノックバックした瞬間、縛りの呪文によって生成されていた鎖が解ける。
直ぐさま松明の火を使って狂い躑躅蝶の鉢植えを全て燃やしていく。
「驚いた……まだ、そんな力が……ぐっ!?」
起き上がろうとしたアザレアの顎を蹴り、気絶させる。
曲がりなしにもガーディアンズのメンバーでありながら、弱すぎではと眉をひそめるが……
元々彼はメカニックだ。
戦場に出たところなんて、一度も見たことがない。
となれば、もしかしたら戦闘面ではあまり役に立たない方だったのだろう。
何はともあれ、今回は運が良かった。
もしこれがアザレアではなく、もっと実力の強い相手だったらと考えかける。
しかし、そこでやめておいた。
抵抗出来ないように両手首を両足で踏み付け、衣服を探れば……
「やっぱり取られていたわね……」
取り出した物は、持っていた苦無や召喚術の巻物だった。
これは自分の血を巻物に書かれている術式に塗れば、魔力がなくとも召喚術が使える。
用心のため服に忍ばせて持っていっていたが……やはり眠らされていた間に取られていたようだった。
「この、変態……!」
憎々しげにもう一度踏み躙ってから、キッチリ両手に苦無を差し込む。
本来ならば痛みで目を覚ますはずだが、余程蹴られた時強く打ったのか否か。アザレアは簡単に目を覚まさなかった。
残りの苦無で自分の指に傷を付け、血を巻物の術式に垂らす。
現れたのは、魔導液の瓶だった。
手に取り補給機にセットすれば、
〚ピピッ……“Support ArmaMent, SAM-サム-”起動します〛
[――おはようスズル、その様子だと終わったようだね]
「ご覧の通りよ」
[あれから8時間50分49秒……少し遅すぎではないか?]
相変わらず減らず口を叩くAIだ。
だが、彼がいなかったらここまで上手くはいかなったのもまた事実だった。
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