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夕方のチャイムが鳴り、鳩を食べるかどうかは一旦保留にして四人は家に帰る事にした。
チャイムが鳴ったら帰ると親と約束しているからだ。
そして凪は家に帰った。
帰ってきてもいつものように母親は帰ってきてなかった。
そして、テーブルの上に現金が置いてあったから、それは財布の中に仕舞って、一人で風呂のお湯を沸かして入る。
出てきたら安い時に買いだめしておいたカップラーメンを自分の部屋から持ってきてお湯を入れる。
そして三分経ったらテレビを見ながら食べる。
その間にも家に帰ってくるものは誰一人として居なかった。
食べ終わったら片付けて、カップラーメンを食べたという証拠を隠滅する。
別にバレてもいいが、そのせいでテーブルに置かれる金額が減ったら困るからだ。
貯めたお金は凪の遊行費として使われているが母親は当然知らない
もう凪にとってはお馴染みの生活である。
片親で子供を育てるという事においては、往々にしてある事だ。
凪の母は看護師という忙しい仕事をしており夜に居ない事が多々あるのだ。
別に凪も自分が愛されていないとは思っていない。
毎朝お弁当を用意しているだけでも良き母親と言えるだろう。
テレビをしばらく見てから、宿題は明日虎太郎に写させて貰おうと思いながら自分の部屋へと戻る。
そしてうさぎぬいぐるみのミミに話しかける。
「ただいまミミ。今日もお前は家に居ていいな。でも汚れてきたな。明日洗濯に出すか」
凪の部屋には昔馴染みの4体の人形が有る。
古くからあるのはうさぎの人形でミミという。
一人っ子であった凪の古くからの友人である。
ミミと話す凪はいつもの毒舌をどこで置き忘れてきたのかという程、優しく話す。
喋らないが自分の事を絶対に否定しないミミに対してだけは本心で話す事が出来た。
凪は今日あった事などをミミに話してからぬいぐるみに囲まれて寝た。
こんな姿はクラスメートには絶対に見せられない姿だろう。
◇
次の日の朝、いつものようにバス停に四人は並んでバスを待っていた。
虎太郎は大きな虫取り網を持っている。
「一応聞くが、一体それで何をするんだ?」
呆れたように凪が聞くと、春斗は自信満々に答える。
「素手で鳩を捕まえるのは危険だという事が分かったからな。これだったら捕まえたまま弱らせられるだろう」
見ると春斗の右腕には鳩につつかれたのか、大きな絆創膏が貼ってある。
昨日は走り回って疲れたし、春斗も気づいていたのか、いなかったのかは分からないが、何も言っていなかったから気づかなかった。
「っていうかさ、そもそも本当に鳩の肉なのか?」
根本的な疑問を凪が口にする。
確かに鳩の肉かもしれないというのは、ただの推論だ。
三人は考え込んだ後に口々に答えた。
「た、確かに。な、凪の言う通りだね」
「誰かに聞いてみるか。っつても誰に聞くか?」
「大人」
「虎太郎ナイスアイディア」
話しているとちょうどバスが来たから、四人は乗った。
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