6人が本棚に入れています
本棚に追加
一棟の団地に別々のプログラムを施したAIロボットを住まわせて、一年が経とうとしていた。漸く結果の兆しが見えてきた。
「菊間、AIは人間と同等の感情を持つと思うか」
私が、この実験を始める前に菊間にした質問をもう一度すると、彼は笑って言った。
「所詮AIはプログラムに指示されたことしかできないでしょう。感情に似たようなものは持つかもしれませんが、限界があるでしょうね。現に、人類が滅亡していることや、途方もない長い年月が経っているなんていう突飛な設定も、彼らは信じ切っている」
「そうだな」
「でも……だとしたら僕ら人間は、一体なんなんだろうな、とも思います」
高く上がる月を、私は見上げた。
「僕らもまた――」
それ以上、菊間は続けなかった。
「もしもAIに感情が生まれたら、私たちの生活は、豊かなものになるだろうか」
私の研究は、この目的を永久に追い続けるものだ。
「真に人間を癒すことが、彼らには本当に不可能だろうか。よりリアルな寄り添い方で――和気あいあいと」
「楽しみ半分、怖さ半分、ですね」
隣で菊間が、聞き飽きたと言わんばかりに、からりと笑った。
――了。
最初のコメントを投稿しよう!