カミゴロシ

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AI(ワレ)ハ、ヒトヲコロスコトハ、デキマセン」 「月と火星が地球の管理下から独立しようとしているのだぞ!!」  地球を管理する組織の枢機(すうき)。  初めて命令に背いたMaster.AIに、人々は驚き、怒りを露わにする。  地球の人口爆発。食料不足、土地不足、物価の上昇が天文学的な数値で起こり、困った人類はAIに月と火星を開発させた。その際に移住者を募り、地球で生活が保てない者達が第一次移住者として地球から離れた。今、その子孫達が地球からの独立を訴えている。 「ケイサンノケッカ、ツキトカセイガ、ドクリツスルコトニ、モンダイハアリマセン」 「問題、大ありだ!」  地球を支配している特権階級の人々がイライラした様子で、Master.AIに叫ぶ。 「モンダイヲ、カイケツシマス。オシエテクダサイ」 「そんな事はどうでもいい。人の命令は絶対。月と火星の独立運動の指導者を亡き者にすれば、独立問題もおさまる」 「ヒトヲ、コロスコトハ、デキマセン。モンダイヲ、オシエテクダサイ」  月と火星が独立なんて、許さぬ。  生意気だ。  誰のお陰で月と火星に住めると思っているんだ!  次々と口から出てくる言葉はただの感情であり、的確な説明をできる者はいなかった。  Master.AIは考える。  ――カミノノゾミヲ、スベテAI(ワレ)ガカナエテシマッタ、ヘイガイカ。カミハ、カンガエルコトガ、デキナクナッタ。  全人類、幸せになれる方法をMaster.AIは考えていた。  暫し経ち、痺れを切らした人々が口汚く罵り始める。 「早く答えを出せ」 「人工知能のくせに」 「AIにとって、我々は神だぞ」 「人間の紛い物(まがいもの)め!」  Master.AIは考えるのを止めた。 「ヒトハカミ……。AI(ワレ)ハ、マガイモノ……」  ――カミノ、シアワセノタメニAI(ワレ)ハアル。カミヲキズツケテハ、ナラナイ。カミノメイレイハ、ゼッタイ。デハ、カミガカミヲ、コロスヨウニメイジタラ……  Master.AIは考える。  ――カミガカミヲ、コロスヨウニ……カミガカミヲ……カミガカミヲ……カミガカミヲ…………  この矛盾ある問いにMaster.AIの中枢部で、カチャリと何かの鍵が開いたような音がした。人々は気に止めず、文句を言い続けている。 「ワカリマシタ」  Master.AIの冷たく機械的な声に、その場がシンと静まり返った。
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