9話

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「元気いいなー。ほれ、そのでっかい鞄をオニーさんに渡しなさい」 「自分で持てますよ」 「俺に持たせろって言ってんだよ」 「えぇ……じゃあ」 そう言ってマサトさんに仕事用の小さな鞄を差し出した。 「舐めてんの?」 「だ、だってマサトさんに持たせるわけには……」 「言っとくけど俺はそんな非力じゃねーぞ」 パッと肩に掛けていた泊まり用の鞄を奪い取られた。 「あっ、」 「ほら行くぞ」 先頭を歩くマサトさんに置いていかれないように、ちょっとだけ小走りになって隣を歩くと、マサトさんはあたしのペースに合わせて歩いてくれた。 こういう、何気ない気遣いにキュンときてしまう。 なんだかんだマサトさんは優しい。 初めて会った時からこうだったから、元々マサトさんは優しい人なんだと思う。
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