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私は高校生になった。
夢は相変わらず見る。
でも浅く、とてつもなく浅く夢の中の人とは付き合う様になっていた。
そうすれば朝起きての疲労感もなければ、罪悪感もない。
会おうとしなければ永遠に会わないただの夢の通行人にしか過ぎないのだから。
私もそれだけ大人になったのかも知れないし、今までの経験値がそうさせているのかも知れない。
相変わらず好きな人や好きなアーティストの夢に行ける訳ではないが、危なそうな人、楽しそうな人、優しそうな人、上手く付き合え、交わす事を覚えていた。
だから逆に高校時代は夢を見る事にストレスを感じなくなった。
現実世界を満喫していた。
ライブに行ったり、同級生の男子に告白されデートを楽しんだり、部活にも力を入れたりした。
けれど、高校2年生になる頃から私は自然に【私が見る夢にはどんな意味があるのか?】
【同じ様な現象に捕らわれている人はいるのか?】
と思うようになり、脳や夢の仕組みに付いて学ぶ様になり、3年生になってからは大学の進路をそれらが学べる様な所を選んで勉強する様になった。
そんな人生の分岐点に差し掛かろうとしていた時に私はまた厄介な夢を見る。
その人は男性だった。
初めて会ったのはどこかの教室の様な所だった。
基本的に夢の中では私はあまり年上の男性とは関わらない様にしていた。
けれどその彼はとても優しく、年齢もほぼ近そうという見た目もあり、好きなアーティストやアニメも同じという事で、クラスメイトの乗りで意気投合してしまった。
当然初日はお互い名前なんて交わす事なく、その教室の様な場所でただ話、共感し、笑った。楽しかった。
ただそれだけだった。
それだけで良かったのに、、、いつもの私ならそれでもう二度と会わない人だったのに、、
久しぶりに次の日も同じ人物に出会う事になる。
これはヤバいパターンだと思い、私は彼を見た時に逃げようと思っていた。面倒はごめんだ。
けれど一足遅かった。
彼が私を見つける方が少し早かった。
全力笑顔で私に手を振って、手招きまでしている。
まぁ、いいか2日位なら、、と諦めた。
2日目は何故か遊園地だった。
どこの遊園地かは分からないが、小さい頃に両親に連れて行って貰ったきり、私は特に好きでもなかったので久し振りの遊園地になった。
本当は、どこの場所かなんて本当はその遊園地の名前とかちゃんと見ておけばすぐ分かる事なのだ。
でも私の夢の時間というのはそんなに長い訳でもなく、目の前の人間に合わせるのにいっぱいいっぱいなのと、そもそもが、覚えない、調べない事にするという癖がついていた。
覚えてしまうと調べたくなる。分かっていた。
流石に2日目。お互いの名前位は呼びあった。夢の中で遊ぶ時にも大概相手の名前位は呼ぶし、覚える。
彼はゆきや、と名乗った。名字は知らない。
年は2個上。だからか、あんまり会話していてもあまりズレがないのは、、と思った。
遊園地で遊ぶ位ならその位の知識で充分遊べる。
実際私はそんなに好きでもなかった遊園地を彼が上手にエスコートしてくれたり、盛り上げてくれたりで、何気にとても楽しかった。
まるでデートだな、、と少し照れたりもしたもんだ。そんな訳ないのに。
どうなんだろう?2年生の時に付き合った現実の彼氏と今も続いていたら罪悪感だったり、楽しめなかったりしたのだろうか?
逆に現実でない分、私は気を使わなかったから余計に楽しめたのかも知れない。
分からないけど、、、それだけ彼との時間は楽しかったのだ。
目が覚めると余韻が残る。
アトラクションより、彼とシェアしたソフトクリームの味の方が余計に濃かった。
でもその時点での私はちゃんと割り切りは出来ていた。
いつ会えなくなってもいい関係。
でも、、少なくとも嫌な相手でもなかった。
どちらか、というか、とても楽しかったのは事実だ。
もう会わないでおこうと思っている私の心を見抜いているのか、私はその後も暫く彼と夢の中を共感する事になった。
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