9人が本棚に入れています
本棚に追加
私の夢は色んな所に飛ぶ。
殆どが日本ばかりだが、たまに言語の違う国にも行く事がある。
でもやっぱりそれは夢で、私は飛行機代も払っていないのに、さも当然の様に現地にいて、相手は必ず笑顔で当たり前の様に受け入れてくれる。
期間は長ければ一週間位同じ人物と対面する事もある。
当然仲良くもなるし、喧嘩したり、たまに危険が及ぶ事もあった。
けど、いざ!という時は必ず目が覚める。
夢の中で私は死んだ事はない。
必ず逃げ切れる。
だが、走って逃げる感覚やしんどさ、相手の怒鳴る声、にぎられた腕の跡などは目が覚めても残ったままなのだ。
私はその度に息を整え、二度同じ怖い人には会いません様に、と願いながらまた眠りにつく。
そう願いながら眠るとその人には二度と出会う事はない。
とはいえ、この様な悪夢を連続して見ると、当然朝には疲労が残り、私は常に睡眠不足になる。
都合のいい夢と言ってしまえばそれで済むのだが、毎朝こんなに記憶が鮮明で体が疲れていては流石に辛い。
勿論その不思議な現象を親や友人に相談した事は何度もある。
当然の反応だが大抵信じて貰えないし、証拠もない。夢の中の出来事を証明する術はないのだ。
こんな事もあった。
おばあちゃんの家に遊びに行った時、そこはとても田舎で山と海しかない様な場所。
何度か行った事があるので近所位は知っている場所だ。
葡萄畑が沢山ある場所で私は知った顔に出会った。
あれ??どこかで??と初めは思った。
直ぐに側にいた両親に知り合いかどうか聞いた。
両親もおばあちゃんも知らない人だという。
でも私には見覚えがあった。
葡萄の箱積めをしているふくよかな男性だった。
おばあちゃんはたまにそこで葡萄を買うとは言っていたがそれ以上の関わりはない、という。
でも、、確かに、、、
私はおばあちゃんの家に戻り暫く考えた。
あっ!!!
私は覚えていた。思い出した。
思い出すのに時間がかかったのは彼には夢の中で一度しか会っていないからだ。
そして一度しか会っていないのに鮮明に核心的に思い出せるのは、、
彼が私を襲おうとしたからだ!!
忘れもしない。
彼は優しい顔で私に近づき、あの時は森の様なイメージがあったけど、葡萄畑だ。
私はその時まだ小学生低学年だった。
その鬱蒼と茂る葡萄畑に私を誘い、何故だか急に「この辺にお花屋さんはない?」と聞いてきた。
当然こんな畑の真ん中に連れて来られて花屋なんてあるわけない!と幼心にも思っていた。
「いえ、分かりません。」と私が言うと男性は「肩車したら見えるかも知れない。」と言う。
勿論そんな訳ない。かと言って優しそうだし、もしかしたら見えるのかも知れない。子供だった私は明らかに変質者に対しての警戒心はなかった。
男は私を肩車し「どう?見えるかな?」と聞いてきた。
花屋どころか、低い葡萄の木が私に刺さってそれどころではない。
「いえ、見えません。降ろして下さい。」
と私が言うと、男は降ろす姿勢を取った後で体重の軽い私を抱き上げたまま顔を私の体に押し当て興奮した様に呼吸する。
そこで私は初めて「この人は危ない!」と思った。
遅いかも知れないけれど、小学低学年の警戒心とはこんなもので、変質者に対応出来る経験値は皆無だった。
怖い!!!誰か!!
と思っても周りは葡萄の木々ばかり。
恐怖で声も出ない。
こんな大人に会ったのも初めてだったし、どうすればいいか分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!