夢で逢いましょう

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いつ頃からだろう? だいぶ幼かった頃から私は毎日夜眠りにつくと夢を見る。 夢の中でのお話は朝起きても全て覚えている。 普通なら、きっと普通なら、それでおしまい。直ぐに忘れる。 たまに悪夢だったり、いい夢だったり、夢の中の私はいつも自由なんだけど、妙に感覚がある。 触れたもの、感じたもの。 味覚、聴覚、全てが生々しく鮮明に覚えている、というか感じて、朝にまで記憶される。 私はそれが夢、の当たり前だと思っていた。 だけど成長と共に人とは少し感覚が違うのだと感じ始めた。 小学生の時はまだただ楽しさを求めて飛んでみたり、壁をすり抜けてみたり、そこにいた人物、老若男女共にお喋りしたり笑ったりした。 成長と共に私は不思議で仕方がなかった。 夢の中で会った住人は私が求めて存在している人物ではなく、住所や名前、年齢職業もバラバラで生々しい。 私はあまりにそれが鮮明なのが怖すぎて何度かその夢の住人が現実の世界に存在しているものなのか調べた事がある。 その一つに前の夜に夢の中で会った老婦人に聞いた住所が、たまたま家から近い老人ホームだったからだ。 その時中学に上がりたてだった私は、夢の中で教えて貰った病室に入った。 施設のスタッフもその人の名前を言っただけで孫と勘違いされたのかスムーズに通してくれた。 私は夢で見た病室の扉を開ける。 愕然とした。 まさに窓の光を楽しむ様に外を微笑みながら眺めている老婦人は私が昨夜見た夢の中の人そのものだったからだ。 私は思わず夢と現実がごっちゃになりそうだった。眩暈すらした。 ずっと夢の中の人物は架空の人間だと信じきっていたから、その時の驚きは長年の私の【夜に見る夢】概念をぶち壊し、戦慄すら覚えた。 まさか、、、そんな、、 私はそのご婦人を遠目で眺めながら震えていた。 するとベッドに座ったままのご婦人が私に気づいてこちらを向いた。 勿論縁もゆかりもない他人で、夢の中で一度会っただけだ。 婦人はにっこりと微笑みながら 「あら?どなたかしら?」 と私に聞いた。 私はその微笑んだ顔で夢の中のその人はまさに今目の前にいる彼女だ!と確信し、急に怖くなった。 そんな、、、事って、、、 気がつくと私は病室を走って逃げる様に立ち去ってしまった。 ただ、ただ、怖かった。 何故!?どうして!?あれは、、、夢だよね??? 私はそれから怖くてその施設には行かなかったし、夢の中でも彼女に会わなくなった。 老人ホームなんて私には無縁の場所で、そこに行った事すらない。 でも夢の中では私は確かに彼女と楽しくお話をしたり、折り紙を教えて貰ったり、彼女が最近息子が見舞いに来てくれない事を嘆いていたのを私は知っている。 けど笑顔の絶えない人だった。 夢というのは見たくて見るものではないし、自分から選んでこの夢を見るという都合のいい物ではない。 だから色んな人にも会うし、怖い思いもした。 けれど、夢だから、で諦めはついた。 ついていた。今までは。
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