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神さまからの求婚
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「いやいや、無事、祭りが開催出来て、良かったよ」
祭囃子が賑やかに鳴り響く中、村長がそう言いながら賑わう祭り会場を見て回っていた。ミズサワの起こした嵐で、村唯一の村外へ通じる道が倒木や土砂崩れで塞がれてしまったのだが、道の先の隣町からも応援があって、無事に道路は開通した。実は隣町からの応援には東姫が一肌脱いでくれていて、村と町の境界線上にあった山肌を縫った道路の崖の修復が尋常じゃないスピードで済んだのは、東姫が崖を支えてくれたから出来たことなのだと、弧之善がこっそり教えてくれた。
道が開通するまでの間、レンタルする予定だった機材などの運び入れもうまくいくか分からなかったし、なにより、村外からのお客さまが来てくれるだろうかと、村民一同、ハラハラしながら工事を見守ったのだ。
快晴の日曜日。蒼依も手伝いに駆けつけてくれて、光月の屋台には、大勢のお客さまが来てくれた。
「五百円になります、ありがとうございます」
透明のプラスチックケースに揚げシューを入れて、リーフレットを巻いて輪ゴムで閉じると、お客さんが、きらきらとした目で光月を見ていた。
「ねえ、あなたよね? この動画の女の人」
そう言って彼女がスマホに映し出したのは、とあるSNSに投稿された動画。ミズサワの水路のほとり、雨の打ち付ける中で、弧之善が光月を助けようとしたところを録画した、動画だった。あの場に通りかかった村人が、スマホのカメラを起動させたらしかった。
そして弧之善の手のひらから輝く光月の魂が体に埋め込まれていき、光月が体を起こすまでが投稿されたその動画は、弧之善がリーフレットの裏に託した和歌と共に「#神様が救った少女との恋」とハッシュタグが付いていて、それがみんなに共有されまくっているのだ。そして、その動画を見た人たちが、光月を見た後で探す人物がもう一人。
「……で、カミサマは何処にいるの?」
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