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タカヤマサチコ ヲ コロシマショウ
タカヤマサチコ ヲ コロシマショウ
「毎日、毎晩なんです。聞こえてくるんです」
高山理子はバイオレット・マミに話し始めた。
「夢にしても毎晩はおかしい。それに、お父さん、いえ父も同じ声を聞くんです」
バイオレット・マミは占い師の肩書きで仕事をしているのでとまどった。それは、呪いとか除霊のジャンルではないか?
「その、“たかやまさちこ”という名前に心当たりはありますか」
「伯母なんです。私の父、高山友樹の姉で今は結婚して井出幸子の名前です。伯母は深刻なガンなので、呪われているんじゃないかと」
「そうですか…。あいにくと呪いをはね返すとか除霊は致しかねるので、スピリチュアルの方面の先生にお願いをした方がよろしいのではないですか」
「はい、でも、前回のマミ先生のご指導がぴったりとあたって、今の彼とお付き合いを始めたのです。だから、先生なら何かご存知ではないかと」
「はい…」
「ここで購入したブレスレットもとても恋愛に効果があったと思うんです。せめて病気に効いて、伯母が無事でいられるようにと」
マミはちょっと心がチクリとした。石、にそこまで効果があるものか、口には出すまいが、そこまで思い入れがなかった。しかし自分はプロの占い師である。病気に効果があるとされるブレスレットをすすめ、ガン治療を謳う神社の話や、温泉、飲み水、知っている限りの話を理子に話した。
帰り道、帰宅する前に理子は近くにある高山家の菩提寺に立ちよった。高山家はかつて農家であって、地元では顔役的な裕福な家であった。
理子は幸子が病にかかってからまめに先祖の墓に手を合わせるようになった。
墓所に入り、何か聞こえてくると思ったら毎夜夢にみる“タカヤマサチコヲ”であった。ぎょっとして立ちつくす理子の前を髪で顔の良く見えない女が墓石の陰から現れた。口元が笑っている。
タカヤマサチコヲコロシマショウ
「七代祟る」
確かにそう聞こえた。
理子は耳を塞いで座り込んだ。どうやって家にたどり着いたか覚えていない。
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