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「それに、吉永さんは、三島さんのことかなり嫌ってたわよ。毎年毎年、一緒に花火大会やバーベキューに行くのが負担でしんどい。車だしすらしてくれないて。食材も一切買ってこなくって、手ぶらで来て図々しいって」
「そんなこと言ってない!」
確かに、車に乗って会場まで行くのは少ししんどいなぁと思ってた。
花火大会は今年から車での来場はご遠慮くださいとアナウンスが出たので、駐車場探しに困らなくって済んだなぁとぼやいたぐらいだ。
三島さんはきちんと自分の家の車で来るし、バーベキューの食材は沢山買ってきてくれる。
もちろん自分の家もそうだが。
「あら、そうでしたっけ? 私が間違えて聞いたのかしら?」
ごめんあそばせとわざとらしく持参した扇子で扇ぐ。
「三島さんも、吉永さんのこと、義理実家に依存してる図々しい家族っていってましたもんね。これで離婚して、どっちに親権がいくのか楽しみって」
「そんなこと言ってません! 勝手に脚色や嘘つかないでくれますか? さっきから、双方の悪口ばっか言って、何がしたいの?」
「だから言ってるでしょう。2人の修羅場が見たいの。この両家が崩壊する瞬間を間近で見たいの! 今ね、私、とても楽しいの。ねぇ、三島さん、今から本音ぶつけたらいかが? 吉永さんも」
胸が弾む。この2人、いいえ、この両家の関係の地盤がゆるんで、ひびが入っていく様子を見ていく過程が楽しくてしかたない。
「ほら、2人とも、薄汚い本音を私に見せて! 聞かせて! 相談乗りますから!」
子どものようにはしゃぐ石塚に「かき回すなら、もうお引き取り願えますか」と冷たく突き放す口調が聞こえた。紘人だった。
「まぁ! 何おっしゃってるの? あなたの妻の醜い感情が今ここで、ご覧になれるの。このような姿なんて、滅多に見られなくってよ?」
口先をとがらせて、酷い殿方だわと拗ねた。
今目の前にいる石塚さんは本当に同じ人なの?
穏やかで上品な口調で、優しい。
別人みたい。いや、別人であってほしい。
石塚紗夜じゃない。あんなの!
――あの人、昔っから、人間関係でトラブってるので有名なんだよ。
――彼女と関わると周りの人間関係が崩壊するの。間接的に争いごとやいざこざを起こす感じ。
――まだそういうことしてるんだ。専業主婦は妥当だね。
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