1章ー2

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1章ー2

「安藤先生怖いよねー……」 「今日も機嫌悪かったのかなー?」  吉永羽留奈(はるな)は三つ編みされた髪を揺らして、口先をとがらせた。  同じクラスの石塚汐音(しおん)と一緒に下校していた。  背は羽留奈と同じぐらいで、髪は短め。丸顔がはいって、大きな目と高い鼻。  まるで人形さんみたいというのが、羽留奈の第一印象である。  この3月に引っ越してきたばかりだが、彼女は人とすぐに仲良くなれるタイプで、羽留奈と近所ということから意気投合した。    羽留奈も色々な子と仲良くするのが好きなタイプなので、汐音と休み時間遊ぶことが楽しみだ。  6年2組――2人の担任である安藤は、50代前ぐらいだろうか。  涼やかな目つきで、シャープな顔立ち、髪は長く、背が高い。  冗談一つ言わず、常に緊張感を強いられるような雰囲気。  一度怒ると、終わりの会が中々終わらない。  安藤の満足いくまで。  毎日毎日何回か怒られている。     挨拶の声が小さいとか、起立するときにもたついたとか、姿勢が悪かったとか、言葉遣いが適切じゃないから、学校に関係ないものを持ってきてたとか、細かいことで怒られる。  しかも怒るのは男子ばかり。女子には割と甘い。    そういうのもあるのか、4月の終わりの時点で、既に男子達から嫌われていた。  贔屓されている女子達も嫌な気分になっている。    緊張感を強いられてるみたいで、羽留奈と汐音は苦手意識がある。 「今日まで先生下敷きで何も言わなかったのにイミフ過ぎる。それに、去年の先生も、その前の先生も何も言わなかったんだよ? おかしいじゃん?」    今日注意されたのは、浅野というちょっと地味目の男子だった。  算数の授業中に、暑いからと下敷きをうちわ代わりに扇いでたら、怒られたというもの。  それがたまたまキャラクターものだった。  終わりの会で、他の人もいるはずと抜き打ちチェックをはじめた。  机の中にあるお道具箱を机の上に見せた。  キャラクターもの以外に、人気アイドルの下敷きや柄物も没収された。  安藤の手に渡ったのは、クラス30人のうち18人だった。  羽留奈もその1人だった。    使ってたのは、大人から子どもまで人気あるアニメのキャラクターの下敷きだ。  周りの友達もバージョン違いのものを持ってきてた。
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