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1章ー3
「どうぞ、上がって!」
咲月は石塚が来て大丈夫のように、夕飯の準備を済ませた。
具材を切って、自動調理器に入れて、希望の時間に予約すればいいだけと、19時にできあがるようにセットしただけだったから、15分で終了した。
来客用の石塚をリビングに案内し、どうぞ座ってくださいとダイニングチェアに座らせた。
「まぁ、やっぱり素敵なお家ですね!」
壁一面には海をイメージしたイラスト。
それに合わせてインテリアも南国風デザインの椅子や机や物置になっている。
物はあちこち散らかっているが、それも愛嬌だ。
「コーヒーか紅茶かどちらにする?」
「じゃぁ。コーヒーで!」
咲月はキッチンでインスタントコーヒーを2人分用意し、石塚をもてなした。
石塚一家は3月に引っ越してきて、娘がお互い同じクラスで、いつも仲良く登下校している。
中1の息子の真宙は白蓮中学校に通っていて、マンションで、吉永家とすれ違えば挨拶してくれる子である。
彼女の夫の裕介は単身赴任して、毎週土曜日に帰ってくる。
吉永家ともそれなりに面識がある。
ちなみに彼女の実家は、マンションから車で数分の山王エリアだ。
リビングでの話し声に反応したのか、羽留奈が顔を出した。
「汐音ちゃんのお母さん。こんにちは」
「羽留奈ちゃん、こんにちは」
一通り挨拶をすると、羽留奈は「おかーさん、汐音ちゃんがうちに来たいって言うんだけどいいかな?」とおずおずと尋ねた。
「うん、いいよ。お母さんいるからね」
その瞬間、インターホンが鳴った。
羽留奈はディスプレイに映ってる人に反応し、すぐに出迎えた。
「今、しおちゃんのお母さんが向こうにいるんだけど……」とリビングに案内した。
「今日ね、羽留奈ちゃんのお母さんに、スーパーでたまたま会ったから、一緒にお茶をしてたのよ。こっちおいで。羽留奈ちゃんも」
羽留奈と汐音は親に呼ばれ、一緒にお茶することになった。
「ねぇ、お母さん、無地の下敷きってある? もうないよね?」
羽留奈の質問に「一体どうしたの?」と咲月は首をかしげた。
「今日、キャラクターものの下敷き使ってた男子が、安藤先生に怒られて、羽留奈ちゃんも他の子達も没収されたんです。私は大丈夫でした」
羽留奈と汐音から語られる、帰りの会での出来事に咲月と石塚は顔を見合わせた。
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