あいの燦爛たる復讐構想

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この少女を示すものが何1つ入っていなかった。 それどころか財布すらも入っていなかった。 水筒とお弁当。そして筆箱とルーズリーフの入ったファイルのみ。 着ている制服もどこの高校かわからないが、かなり着崩しているのをみるとどうせ偏差値の低いところだろう。 もう少しどんな子か分かればよかったのにこう何も分からないのは誤算だった。 でも、嬉しい誤算もある。 GPSがつけられているか分からないので公園で粉々に砕き、念を入れて水にもつけたスマホのストラップに「AI」と書かれていた。 「あい」。 それがこの子の名前だろう。 まるで「AI」になるために生まれてきたようなぴったりの名前だった。 さらに顔も美形だった。 これならこの顔のままAI化しても見栄えがいいだろう。 それからのめりこむようにAIを作り始めた。 家出少女という予想は当たっていたようで数日間行方不明のニュースは流れなかった。 まあ、ニュースになったところで動機もないうえに監視カメラで証拠すらもないこの状況では捕まらないだろう。 そして月日が経つこと3ヶ月。 ようやくほぼ人間のAIが完成した。 さっそく起動してみると画面いっぱいに映るあいの顔。 その表情は筋肉や骨の位置など完璧に再現したため本物の人間だった。 「初めまして。さだむくん。今日からよろしくお願いいたします。」 深くお辞儀をするあいに思わず笑みがこぼれる。 「いいか。あい。君は人類初の人間に最も近いAIだ。この天才の俺が作った最高傑作だ。俺を敬え。」 「もちろんです。さだむくんを虚飾なく尊敬しています。」 「きょしょく…?そんな言葉使ったことないなあ…。」
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